2026年10月27日放送の『開運!なんでも鑑定団』で、寺山修司の直筆原稿と台本に700万円の鑑定額がつきました。
作品は、1963年に書かれた音楽劇『海王星』。驚くのは金額だけではありません。すでに知られている台本とは大きく異なる、未公開の原稿だったのです。
どこから見つかったのか、なぜこれほど高く評価されたのか。そして「幻のミュージカル」と呼ばれる『海王星』は、どんな物語なのでしょうか。
寺山修司の直筆原稿が700万円!鑑定結果は予想の7倍
番組に登場したのは、山口悦子さんが祖父から受け継いだ『海王星』の原稿と台本です。
寺山修司が20代の頃に書いた直筆原稿は193枚。さらに台本や修正原稿84枚があり、赤字で手を入れた部分も残っていました。
山口さんの本人評価額は100万円。ところが鑑定結果は700万円となり、予想を大幅に上回りました。
鑑定を担当したのは、扶桑書房店主の東原武文さん。評価の決め手は、著名人の筆跡が残っていることだけではありませんでした。
700万円と評価された理由は?
東原さんによると、今回の原稿は初めて世に出た新出資料。後に台本化され、戯曲全集第9巻に掲載された内容とは大きく違っているそうです。
とりわけ興味深いのが、原稿に書かれた歌の数々。言葉遊びを感じさせる歌が多く、台本には収録されなかったものもあります。
さらに寺山本人が台本に手を入れた跡も確認でき、完成までの創作過程を知る手がかりになります。
作品がどのように書き換えられていったのかをたどれる点が、文学や演劇の資料として高く評価されたのでしょう。なお、700万円は番組での鑑定額であり、実際に売却された価格ではありません。
幻のミュージカル『海王星』とは?あらすじと上演歴
『海王星』は寺山修司が1963年に書いた音楽劇です。舞台は、戦艦の船底につくられた「北海岸ホテル」。
死んだと思われていた父、父の婚約者、そして彼女に惹かれる息子を中心に、愛情と葛藤が交錯する物語が展開します。
寺山らしい幻想的な設定に、歌や踊りが加わる作品です。普通の恋愛劇とはひと味違う、不穏さと華やかさが同居しています。
2021年に山田裕貴主演で初演されていた
「幻のミュージカル」と聞くと、一度も上演されていない作品を想像するかもしれません。しかし『海王星』は2021年12月、東京・PARCO劇場で初演されています。
主演は山田裕貴さん。松雪泰子さん、清水くるみさん、伊原六花さん、中尾ミエさん、ユースケ・サンタマリアさんらが出演しました。
演出は眞鍋卓嗣さん、音楽・音楽監督はドレスコーズの志磨遼平さんが担当。東京公演後は2022年1月に大阪、富山、宮城、青森、名古屋でも上演されました。
つまり今回のニュースは、『海王星』という作品が初めて見つかったという話ではありません。すでに舞台化された作品の、これまで知られていなかった創作段階の原稿が発見されたのです。
公演情報や当時の出演者はPARCO STAGEの公式ページでも確認できます。
寺山修司の原稿はなぜ今まで知られていなかった?
原稿を残していたのは、依頼者の祖父・田中好道さん。戦後間もない時期に帝国劇場でバレエ『白鳥の湖』を手がけるなど、舞台監督の草分け的な存在だった人物です。
番組によれば、田中さんは1963年頃に『海王星』の舞台化に携わっていたとみられます。ただし当時は上演に至らなかったようです。
転機は、放送から約13年前。祖父の会社を継いだ叔父が事務所を片付けていた際に、原稿と台本を発見しました。
それまで家族の誰も存在を知らなかったといいます。長い間保管されていた資料が、テレビ番組をきっかけに注目されることになりました。
1963年に上演されなかったのはなぜ?
番組の公式説明では、田中さんが当時の舞台化に関わったらしいことは紹介されていますが、上演されなかった理由までは確定していません。
したがって、資金不足や関係者の対立など、具体的な理由を断定することはできません。
ただ、寺山が若い頃に構想した作品が半世紀以上を経て舞台化され、さらに別の直筆原稿まで見つかったという経緯は、それだけでも興味深いものがあります。
寺山修司はどんな人?『海王星』は天井桟敷より前の作品
寺山修司は1935年生まれ、1983年に亡くなった詩人・劇作家・映画監督です。短歌や詩から演劇、映画まで幅広く活動しました。
1967年には演劇実験室「天井桟敷」を結成し、日本の前衛演劇を代表する存在として知られるようになります。
『海王星』が書かれた1963年は、その天井桟敷が誕生する前。後に独自の演劇世界を築く寺山が、20代で取り組んだ作品だったのです。
今回発見された原稿には、刊行された台本にない歌も含まれています。若き日の寺山がどのような言葉を選び、どのように作品を練り上げたのか。今後の研究にもつながりそうです。
まとめ|700万円の価値は「未公開の創作過程」にあった
『なんでも鑑定団』で700万円と評価されたのは、寺山修司の音楽劇『海王星』の直筆原稿と台本でした。
作品そのものは2021年に初演されていますが、今回の原稿は既刊の台本と大きく異なる新出資料。収録されなかった歌や本人の修正が残っている点に、特別な価値があります。
約60年前に書かれた言葉が、思いがけない形で再び脚光を浴びました。今後、この資料がどのように保存・研究されるのかにも注目したいところです。