脳科学者の中野信子さんがテレビ番組で口にした「ほぼ性接待みたいなところがある」という言葉が、波紋を広げています。
2026年10月15日放送の『ニュースto』で、高市早苗首相の人脈について話していた際の発言です。司会の黒木千晶アナウンサーがすぐに否定し、別の共演者も異論を唱えました。
なぜ、そこまで問題になったのでしょうか。ポイントは、政治の世界で女性が人脈をつくりにくいという問題提起と、性的な接待があるかのように聞こえる表現が混ざってしまったことです。
中野さんは19日深夜にInstagramで謝罪しました。発言の流れから謝罪の真意まで整理します。
中野信子の「性接待」発言とは?何が起きたのか
問題の場面は、読売テレビ・日本テレビ系『ニュースto』の10月15日放送回。簗和生氏の農林水産相辞任を取り上げるなかで、政治家の人脈や高市首相の組閣に話が及びました。
木曜コメンテーターとして出演していた中野さんは、高市首相が「お友達が少ない」と言われることに触れ、もし男性だったらどうかと問いかけました。
そのうえで、政治家が夜の会合を通じて人脈を広げ、登用する人材を見つけることがあると説明。女性はそうした場を利用しにくいとして、「ほぼ性接待みたいなところがあるから」と発言したのです。
すると、司会の黒木千晶アナウンサーが「そういうことはないと思います」とすぐに否定。さらにジャーナリストの峯村健司さんも、性差は関係ないとの考えを示しました。
放送後には、共演者の反応も含めてこの場面が話題に。「スタジオが凍りついた」といった表現で取り上げられました。ただし、これは緊張したやり取りを表す比喩であり、全員が沈黙したという意味ではありません。
なぜ黒木千晶アナはすぐに否定した?
政治家が会食を通じて人脈を築くことと、そこに性的な接待があることは、まったく別の話です。
中野さんは女性が参加しにくい人脈形成の場について説明しようとしたのでしょう。しかし「性接待」という表現は、政治の世界で性的な接待が広く行われているかのような印象を与えかねません。
しかも、話題に上っていたのは実在する高市首相です。高市氏自身が性接待に関わっていると中野さんが断定したわけではありませんが、文脈を知らずに聞けば、政治家への疑惑と受け止める人もいるでしょう。
黒木アナがどう考えて発言を遮ったのか、本人の詳しい説明は確認できません。ただ、番組中に根拠の示されていない重大な印象が広がるのを防ぐ役割を果たした、と見ることはできそうです。
中野信子がInstagramで謝罪!本当に言いたかったこと
発言から4日後の10月19日深夜、中野さんは自身のInstagramで説明と謝罪を行いました。
本人によれば、問題にしたかったのは、夜の会食を通じた接待の場が仕事上の人脈づくりに使われる一方、女性はそこに参加しにくく、結果としてネットワークから外れやすいという構造です。
限られた放送時間で説明が不十分になり、意図とは異なる形で受け取られる発言になったと説明。公共の電波で真意を正確に伝える責任は自分にあると認め、謝罪しました。
要するに、中野さんが伝えたかったのは「女性政治家が性接待をしている」という話ではなく、仕事や政治の重要な人脈が夜の会食で築かれることへの問題意識だったということです。
ここで考えたいのは、問題提起そのものと、その伝え方は分けて評価できるという点です。
たとえば、育児や介護、家庭の事情などで夜の会食に参加しづらい人が、人脈形成で不利になることは十分考えられます。こうした不公平について議論する意義はあるでしょう。
一方で、女性は夜の会合を利用できないと一括りにするのも正確ではありません。参加しにくさには性別だけでなく、家庭環境や職場文化、個人の事情なども関係します。
そして何より、夜の会食を「ほぼ性接待」と表現するには、相応の裏付けが必要です。今回の放送で、その根拠が具体的に示されたとは確認できません。
中野信子の発言はなぜ炎上?批判が集まった理由
女性政治家への偏見につながるおそれ
まず問題なのは、女性政治家と性的な接待を結びつけるような印象を与えたことです。
本来は女性が政治の世界で不利になりうる構造を語ろうとしたのに、結果として女性の政治参加への偏見を強めかねない表現になってしまいました。
特定の女性政治家について話している最中だったことも、発言をより刺激的なものにしました。
「夜の人脈づくり」と「性接待」は別問題
会食や懇親会で仕事の話が進むことは、政治以外の業界でもあるでしょう。そこに参加できない人が不利になる、という指摘には考える余地があります。
しかし、性的な接待があるという話は別です。事実として主張するなら、具体的な事例や証拠が求められます。
問題意識に共感する人がいたとしても、「性接待」という言葉の使い方には疑問を持ったのではないでしょうか。
SNSで短く切り取られると意味が変わる
今回のような発言は、短い動画や一文だけで拡散されると、もともとの議論が見えにくくなります。
中野さんが女性政治家の性接待を直接告発したかのように受け取るのは正確ではありません。あくまで、夜の人脈形成について論じるなかで問題の言葉を使ったのです。
だからといって、前後の文脈があれば発言に問題がないというわけでもありません。言葉選びの問題と、切り取りによる誤解の両方に注意が必要です。
中野信子は『ニュースto』を降板する?
10月20日時点で、今回の発言を理由とする正式な降板決定は確認できません。
『ニュースto』は、20年続いた『情報ライブ ミヤネ屋』の後番組として10月5日に始まったばかり。黒木千晶アナが月曜から木曜のMCを務め、金曜にはSUPER EIGHTの村上信五さんも出演する新番組です。
番組開始直後の騒動ではありますが、SNSでの批判と出演契約に関する正式な決定は分けて考えるべきでしょう。
まとめ
中野信子さんの「性接待」発言が波紋を広げたのは、女性が夜の会合による人脈づくりに参加しにくいという問題提起のなかで、性的な接待を連想させる強い表現を使ったためです。
黒木千晶アナと峯村健司さんが即座に異論を唱え、中野さんは10月19日深夜にInstagramで謝罪しました。
人脈づくりの機会が一部の人に偏っていないかという問いは、議論する価値があります。ただし、その問題を伝えるために根拠のない疑惑を連想させてしまっては、本来の論点まで伝わりにくくなります。
今回の騒動は、テレビで発する言葉の重さと、意図を正確に伝える難しさを浮き彫りにしました。
参考:J-CASTニュース(2026年10月20日)、日刊スポーツ(2026年10月20日)、読売テレビ公式(番組情報)