AIが進化したら、自分の部署もなくなるのでしょうか。
2026年10月、マイクロソフトが約6万人を対象に希望退職制度を導入したニュースが話題になりました。日本でも、AIによる人員削減は一部の企業で影響が出始めています。
ただし、すぐに大量解雇が広がるという話ではありません。むしろ、退職者を補充しない、業務をまとめる、部署を統合するといった変化の方が身近に起こる可能性があります。
AIリストラは日本でも起きている?調査でわかった実態
マイナビが2026年1月に発表した「企業人材ニーズ調査 2025年版」では、全国の企業の採用担当者2,101人にAIによる業務代替と人員削減の可能性を尋ねています。
「すでに人員削減への影響が出ている」は12.3%、「今後は影響がありそう」は22.9%でした。従業員1,000人以上の企業では、すでに影響が出ているとの回答が16.2%に上ります。
ここで注意したいのは、12.3%が「AIを理由に社員を解雇した企業の割合」という意味ではないこと。調査は人員削減への影響について尋ねたもので、解雇、採用抑制、配置転換などの内訳まで示す数字ではありません。
マイクロソフトの6万人は全員解雇される?
マイクロソフトは2026年10月26日、米国・カナダ・英国・インドの対象部門に所属する従業員向けに、自主的に退職を選べる制度「Voluntary Exit Offer」を発表しました。
報道によれば対象は約6万人。2026年6月時点の全従業員約22万3,000人の約27%に当たります。ただし、6万人が退職すると決まったわけではなく、実際の応募人数も別の話です。
会社側は、対象者に金銭的支援やキャリア支援を提供すると説明しています。AIへの大型投資が続く中での動きですが、今回の制度を「AIが6万人の仕事を奪った」と捉えるのは正確ではありません。
AIを積極的に開発している企業でさえ、事業の優先順位や組織の人数を見直している。その点が今回のニュースの大きなポイントでしょう。
AIで人員削減されやすい部署はどこ?
影響を受けやすいのは、職種そのものというより、決まった手順を繰り返す業務です。以下は現在の技術で自動化しやすい仕事から考えた例であり、各部署の廃止が決まっているという意味ではありません。
一般事務・データ入力・経理
請求書の読み取り、経費精算、データ入力、定型資料の作成などは、自動化を進めやすい仕事です。
例えば、書類処理を担当していたチームがAIを使って確認中心の仕事に変われば、以前と同じ人数を必要としなくなるかもしれません。
ただし、決算、税務、内部統制、例外的な取引の判断などは専門性が必要です。経理部が丸ごとなくなるというより、業務の分担が変わる可能性が高いでしょう。
カスタマーサポート・問い合わせ窓口
営業時間、配送状況、手続き案内など、答えが決まっている問い合わせはAIチャットや音声AIが対応しやすい分野です。
一方、複雑な相談やクレーム、事情を踏まえた判断には人の対応が残ります。一次対応の人数を減らし、難しい案件に人員を集中させる形が考えられます。
広告運用・Web制作・マーケティング
広告レポートの集計、バナー案の作成、文章の下書き、数値の比較分析などもAIが得意とする仕事です。
レポート作成だけを担うチームは縮小しても、広告予算の配分、代理店との交渉、広告審査への対応、成果改善などは人の判断が欠かせません。
制作担当と運用担当の役割が重なり、少人数で幅広い業務を受け持つ組織も増えるかもしれません。
人事・採用・社内管理
面接の日程調整、求人票の作成補助、研修資料、社内のよくある質問への回答なども自動化の対象です。
ただ、採用の最終判断や人事評価には公平性や説明責任が求められます。AIに任せられる部分が増えても、人が責任を持つ仕事は残ります。
部署が消滅する?日本で考えられる3つの変化
退職者を補充しない
例えば10人の部署で2人が退職しても、新しく採用せず8人で業務を続ける方法です。AIで作業時間が減れば、会社が欠員補充を見送る判断をする可能性があります。
解雇がなくても、数年かけて部署の人数が減っていくわけです。
部署を別の部署に統合する
データ集計チームを営業企画部門にまとめたり、問い合わせ対応部門を顧客管理部門に吸収したりする再編も考えられます。
部署名が消えても、所属していた社員全員が退職するとは限りません。異動や担当業務の変更という形になる場合もあります。
希望退職や配置転換を進める
業務の自動化で余剰人員が生まれた場合、企業は別の仕事への配置転換や希望退職制度などを検討することがあります。
ただし、AI導入が必ず希望退職につながるわけではありません。人手不足を補うためにAIを使う会社もあるため、企業によって対応は大きく異なります。
日本企業はAIを理由に社員を解雇できる?
日本では、AIを導入したというだけで、会社が自由に社員を解雇できるわけではありません。
労働契約法16条では、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされています。
人員整理を目的とする整理解雇でも、人員削減の必要性、解雇を避けるための努力、人選の合理性、手続きの妥当性などが重要になります。
もっとも、法律があるから部署廃止や雇用への影響が一切ないということでもありません。実際の判断は企業の状況や個別の事情によって変わります。
AI時代に残る仕事は?会社員が意識したいこと
今後は、AIが作った文章や数字をそのまま使うのではなく、誤りを確認し、何を改善するか判断できる人の役割が重要になるでしょう。
例えば広告担当者なら、AIでレポートを作るだけでなく、なぜ成果が落ちたのかを分析して施策を決める。事務職なら、日々の入力作業だけでなく、ミスが起こりにくい業務の仕組みを考える。
ただし、AIを使える人なら必ず雇用が守られるという話ではありません。企業の事業方針や景気によっても雇用は左右されます。
まずは自分の仕事を「自動化できる作業」と「人が判断すべき仕事」に分けて考えることが、変化に備える第一歩になりそうです。
まとめ|AIリストラは解雇より先に部署の再編として現れるかも
日本でも、AIによる業務代替が人員削減に影響しているという回答はすでに出ています。
とはいえ、すべての事務職がなくなるわけでも、AI導入企業が一斉に社員を減らすわけでもありません。
注目したいのは、採用の抑制、退職者の補充停止、定型業務の縮小、部署の統合といった変化です。
「AIに仕事を奪われる」という大きな言葉よりも、気づけば自分の部署の仕事内容や人数が変わっていた。そんな未来の方が、実際には身近なのかもしれません。