AI楽曲「INMU KING(インムキング)」は、公開から約2か月でYouTubeのMVが2600万回再生され、オリコン週間YouTubeチャートで2位を記録しました。大手アーティストと同じランキングで上位に入ったことが注目されています。
一体どれほどすごい数字なのでしょうか。再生ペース、チャートの意味、制作費や音楽的な魅力を比較しながら、10月22日に起きた動画削除まで整理します。
INMU KINGの2600万再生はどれほどすごい?
「INMU KING」は動画投稿者やじゅまんがYAJU-MC名義で2026年8月10日に公開した、生成AIを活用した楽曲とMVです。10月18日時点でYouTube版MVは2600万回再生に達しました。
公開から約69日で割ると、1日平均約38万回、1時間平均では約1万5700回。もちろん日ごとに再生数は異なりますが、個人発の作品として大きな規模であることが分かります。
10月10日には2000万回に到達したと記録されており、そこから8日間でさらに600万回。公開直後だけで終わらず、後半に勢いを増した点も特徴的です。
オリコン週間YouTubeチャートで2位
数字のインパクトをさらに強めたのが、オリコンの週間YouTubeチャートです。9月25日~10月1日の集計で「INMU KING」は約386.6万回の視聴を記録し、2位に入りました。3週前の20位から7位を経て上昇したことも報じられています。
ただし、これはCD売上やストリーミングを含むオリコン総合ランキングの2位ではありません。また、週間チャートの視聴回数とMV単体の累計2600万回は別の指標です。
それでも、テレビの大型企画やメジャー契約を前提としないネット発のAI楽曲が、人気アーティストと同じ動画チャートで上位を争った事実は見逃せません。
なぜここまで流行った?曲の完成度とダンスの拡散力
題材になったのは、成人向け作品を起点にネット上で長く広がってきた「真夏の夜の淫夢」関連のミームです。もともとの文脈を知る人にはネタとして伝わり、知らない人にも独特のダンスや曲調が届く構造になっています。
音楽系YouTuberのみのは、楽曲のイントロの不思議な発音、ラップ中心のAメロ、サビに向けた展開などを分析。耳に残る音の並びや、AIならではの大胆な作りに注目しました。
つまり、話題の題材に頼っただけではなく、音楽自体に繰り返し聴きたくなる仕掛けがあるという見方です。もちろん音楽の評価は人それぞれですが、SNSで「曲はいい」という反応が出る理由の一端は説明できそうです。
「INMU KINGの刑」で二次創作も広がった
もう一つの推進力はダンス動画。AIを使って別の人物やキャラクターに同じダンスを踊らせる派生作品が「INMU KINGの刑」と呼ばれ、SNS上で広まりました。
新しい動画が話題になるたびに原曲を知る人が増える。そんな循環が、公開から時間がたっても再生数が伸び続けた背景にあると考えられます。
ただし、実在人物の画像を本人の同意なく加工することには、肖像や尊厳をめぐる問題もあります。面白さと権利への配慮は分けて考える必要があります。
制作費は5万円弱!2600万再生で儲かった?
制作者のやじゅまんは、楽曲制作に音楽生成AI「Suno」を使ったと説明しています。本人の説明では動画部分が約4万円、Sunoなどを含む制作費は合計5万円弱でした。
少ない予算で数千万回再生の作品を生み出したことは、AI時代の制作環境を象徴する出来事でしょう。ただ、AIに入力するだけで必ずヒットするわけではありません。題材選び、生成結果の選別、映像との組み合わせにも企画力が必要です。
気になる収益については、再生数から単純に推計できません。やじゅまんは権利関係による法的リスクを避けるため、作品を無収益で運用していると説明しています。したがって「2600万再生で数百万円を稼いだ」といった計算は、この作品には当てはまりません。
Adoや米津玄師と同じくらいすごいのか?
短期間のYouTube再生数だけを見れば、INMU KINGは大きなヒットです。ただし、Adoや米津玄師のように長年にわたって多数の楽曲をヒットさせ、配信、ライブ、アルバムなど幅広い実績を積んだアーティストと同じ人気規模だとは言えません。
比較するなら、同じ公開後日数における公式MV単体の再生数、週間視聴回数、配信サービスでの成績など、条件をそろえる必要があります。現時点で「Adoを超えた」「米津玄師と同格」と断定するのは行き過ぎでしょう。
むしろINMU KINGの異例さは、ネットミームを題材にした個人発のAI作品が、音楽チャートの一角に入り込んだことにあります。
2600万再生の本家MVがYouTubeから削除
快進撃のさなか、10月22日に本家YouTube版MVが削除されました。動画ページには「ヌードまたは性的なコンテンツの禁止」というポリシーへの違反が表示され、制作者は再審査を求める姿勢を示しています。
これは権利者からの削除請求が認められたという発表とは別です。制作者も、どの部分が問題と判断されたのか具体的な説明は受けていないと述べています。
10月24日時点で、YouTube版の復旧は確認できていません。ニコニコ動画には原投稿が残るものの、視聴環境によってはセンシティブ表示の設定が必要と案内されています。
詳しい経緯はINMU KINGがYouTubeから削除された理由で紹介しています。
まとめ:INMU KINGのすごさは再生数だけではない
公開から約2か月で2600万再生、オリコン週間YouTubeチャート2位、制作費5万円弱。これらを並べるだけでも「INMU KING」が異例のヒットだったことが分かります。
ただし、その背景には長年のネットミーム文化、AIによる二次創作、そして実在人物の扱いをめぐる賛否もあります。ヒットした事実と、作品への評価は別々に考えたいところです。
ネット文化とAI技術が結びついたとき、個人制作の作品はどこまで広がるのか。「INMU KING」はその可能性と難しさを同時に見せた事例になりました。
作品の背景を詳しく知りたい方はINMU KINGの作者・元ネタ解説もご覧ください。
