病院の中にコンビニはあっても、夜になると閉まってしまう。入院が急に決まって着替えや日用品が必要になったとき、「敷地内にユニクロやドラッグストアもあれば便利なのに」と思ったことはありませんか。
病院の建物の中が難しいなら、駐車場の一角などに独立した店舗をつくる方法もありそうです。実際、千葉県の亀田総合病院には敷地内のユニクロがあり、東京都の有隣病院では2026年に旧駐車場へ24時間営業のコンビニが出店しました。
それなのに、なぜ全国の病院で当たり前にならないのでしょうか。実際の出店例と病院コンビニの運営事情から考えてみます。
病院の敷地内にコンビニやドラッグストアが増えにくい理由
まず、病院の敷地内に一般向けの店をつくることが一律に禁止されているわけではありません。問題は、土地の使い方と採算、そして病院の安全な運営を両立できるかどうかです。
空き地に見えても、病院には必要なスペース
大きな病院には駐車場や広場があります。しかし救急車の進入路、患者の送迎、災害対応、将来の建て替えなど、普段は見えにくい役割もあります。店舗の建設には用途地域や建築基準法などの確認も必要です。
道路に面した一角に店を置ければ、病棟への出入りを制限しながら一般客も受け入れられます。ただし、駐車場を減らしてまで設置する価値があるかは病院ごとに違うでしょう。
患者が多い病院でも、買い物客が多いとは限らない
外来患者が集中する平日の午前中と、夜間や休日では人の流れが変わります。診察に来た人が必ず洋服や化粧品を買うわけでもありません。
2026年7月のITmediaの取材では、病院向け店舗を展開するローソンが病床数、職員数、外来患者数などから出店の採算を判断していると説明しています。病院に人が集まることと、お店が黒字になることは別の話なのです。
ドラッグストアより薬局と売店の組み合わせが多い
病院の近くでは処方箋を扱う調剤薬局の需要があります。一方、マスクや歯ブラシ、おむつ、下着といった日用品は院内売店やコンビニでも販売できます。
医薬品を販売する店舗には、扱う薬の種類に応じた許可や専門職の配置も必要です。敷地内に大きなドラッグストアを一軒つくるより、調剤薬局とコンビニで役割を分ける方が適する場所もありそうです。
実際にある!病院敷地内のユニクロ・コンビニ・薬局
亀田総合病院には独立した建物のユニクロ
千葉県鴨川市の亀田総合病院では、ユニクロが2023年に敷地内店舗の出店を発表しました。売場面積は約60坪で、病院利用者だけでなく近隣住民も利用できる独立店舗です。
入院時の下着や靴下はもちろん、近隣の買い物需要も取り込める点が特徴です。ユニクロは2022年にも東京都済生会中央病院に医療施設内の小型店を開いていますが、こちらは病院の建物内。敷地内に独立して建てる方式とは区別しておきたいところです。
有隣病院は旧駐車場に24時間営業のファミリーマート
東京都世田谷区の有隣病院は、病院正面前の旧駐車場スペースに「ファミリーマート船橋一丁目店」が2026年6月17日にオープンすると発表しました。営業時間は24時間です。
病院側は患者や家族の買い物だけでなく、職員の休憩時間の利便性も期待しています。病院の外に店を設けるという発想を、そのまま形にした例といえます。
滋賀医科大学には薬局2店舗とコンビニが入る施設
滋賀医科大学では2017年、大学構内に「JAMLTリップルテラス」が開設されました。1階には院外薬局2店舗とイートイン付きコンビニが入り、上階は会議室などとして活用されています。
注目したいのは建設方法です。大学が民間事業者と定期借地権設定契約を結び、建物の整備と維持管理を民間に任せる仕組みを採用しました。大学側がすべての建設費を負担しなくても、こうした施設をつくれることがわかります。
病院のコンビニはなぜ24時間営業ではない?
病院は24時間動いているのだから、コンビニも開いていてほしい。とくに夜勤の医師や看護師、急に駆けつけた家族にとっては切実な問題です。
ところが、夜間に自由に買い物できる環境が病院にとって望ましいとは限りません。ローソンは当初24時間営業を打ち出したものの、患者が夜間に病室を離れて利用することを懸念する病院もあり、営業時間を限定する店舗が生まれたと報じられています。
加えて、深夜は売上に対して人件費がかさみやすくなります。そこで広がっているのが、昼間は通常営業、夜間は職員証などで入店する無人営業です。2026年7月時点の取材では、ローソンが約30店舗で導入していると説明しています。
出典:ITmedia ビジネスオンライン(2026年7月15日)
夜間無人営業なら人手不足と買い物の不便を減らせる
静岡県の焼津市立総合病院では、夜間の無人販売や自動販売機を導入した結果、運営事業者の紹介によると夜間の利用者数が倍増したそうです。入院用品などを自動販売機で扱う工夫もされています。
ただし、夜間に利用できるのが職員だけなのか、患者や家族も対象なのかは施設によって異なります。「24時間営業」と書いてあっても、病院の出入口や病棟からの移動には別の制限がある場合もあります。
病院の敷地内に小さな商業施設をつくる未来はある?
今回の事例を見ると、病院敷地内の店舗は決して夢物語ではありません。ユニクロの独立店舗、24時間コンビニ、薬局とコンビニの複合施設と、実現方法はすでにいくつもあります。
ただ、すべての病院に大型商業施設が必要なわけではありません。周辺に店が少ない郊外の病院なら需要がありそうですが、駅前で買い物に困らない病院では優先順位が変わるでしょう。
病院の道路側に24時間コンビニを置き、隣に薬局や小さな衣料品売り場を設ける。あるいは院内コンビニの品ぞろえを増やし、夜間だけ無人化する。土地や利用者数に合わせて選ぶのが現実的です。
急な入院は、ただでさえ慌ただしいもの。病院の敷地内で着替えや日用品をそろえられれば、家族の負担はかなり軽くなります。病院が「治療する場所」であると同時に、「そこにいる人の暮らしを支える場所」にもなっていく。そんな変化がもっと広がってもよさそうです。
