病院がネット予約のみで診察拒否?違法性と高齢者の対処法

耳鼻科を訪れた杖をついた高齢男性が、「ネット予約の方しか受け付けません」と言われ、診察を受けられず帰った――。そんなXの投稿が注目を集めています。

病院がネット予約だけにするのは違法なのでしょうか。結論からいうと、完全Web予約制そのものが直ちに違法になるわけではありません。ただし、予約していないことを理由に診療を断れるかは、患者の症状や診療体制などによって変わります。

目次

耳鼻科で高齢男性が診察を断られた?投稿の内容

2026年10月20日に注目されたXの投稿によると、耳鼻科の待合室に杖をついた高齢男性が訪れ、初診であることを伝えて保険証を出したものの、ネット予約をした人しか受け付けていないと説明されたそうです。

男性はそのまま帰ったといい、投稿者は「代わりに予約をとってくれるお孫さんがいますように」と心配していました。

スマートフォンを使えない人への配慮を求める声がある一方、予約制は待合室の混雑を減らすために必要だという意見もあります。

ただし、これは投稿者の体験談です。医療機関名、当日の予約状況、男性の症状、受付で交わされた説明の全容は確認できていません。投稿だけで病院側に違法行為があったと判断することはできません。

ネット予約のみは違法?医師の応招義務を確認

医師法第19条は、診療に従事する医師が正当な理由なく診察や治療の求めを拒んではならないと定めています。いわゆる「応招義務」です。

ただ、予約なしの患者を必ず診察しなければならないという意味ではありません。

厚生労働省の2019年12月25日付通知では、診療を断ることが正当化されるかについて、患者の緊急性、診療時間内かどうか、医療機関の対応能力、ほかの医療機関で受診できるかなどを総合的に考慮するとしています。

つまり、予約枠が埋まっていても、緊急性が高い患者であれば別の対応が必要になる可能性があります。逆に、緊急性が低く、当日の診療が難しい事情があれば、別の日の予約や他院での受診を案内することも考えられます。

なお、応招義務は医師個人が負う公法上の義務です。医療機関についても、患者の診療の求めに適切に対応する責務があると通知は整理しています。

2024年にも似たような問題が報じられていた

実は今回とよく似た問題が以前にも取り上げられています。

医療専門誌『日本医事新報』が2026年1月19日に公開した解説では、2024年5月21日付の東京新聞の記事を紹介。近所のクリニックを訪れた男性が完全Web予約制への変更を知らず、予約が埋まっていると説明された事例です。そこへ来院した別の高齢男性も、診察を受けられず帰るよう伝えられたといいます。

同誌の解説は、完全Web予約制自体は応招義務違反ではないと解釈できる一方、スマートフォンを使えない高齢者にも配慮した受付体制が必要だと指摘しています。

ネット予約をめぐる議論は、今回突然始まったわけではないのです。

なぜネット予約限定に?高齢者はどうすればいい?

病院側には待ち時間と受付負担を減らすメリット

Web予約には、患者の来院が一度に集中するのを防ぎ、待ち時間や電話対応を減らしやすくするメリットがあります。混雑する耳鼻科や小児科では、予約システムが便利だと感じる人も多いでしょう。

ただし、ネット予約を導入している医療機関と、ネット以外の受付を一切認めない医療機関は別です。完全Web予約制の医療機関が全国でどれほど増えたのかについては、比較可能な統計を確認できませんでした。

また、完全予約制でも電話予約を受け付ける病院はあります。予約の有無と、予約する手段は分けて考える必要があります。

スマホを使えない高齢者の受診方法は?

問題は、スマートフォンを持っていない人や操作が難しい人が、医療機関の入口で困ってしまうことです。

まずは病院に電話し、ネット予約ができない事情を伝えて、電話や窓口での受付、代理予約が可能か確認するとよいでしょう。対応できない場合は、予約なしで診察を受けられる医療機関を探す方法があります。

厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)では、地域や診療科目から医療機関を検索できます。ただし、当日の予約外診療の可否は直接確認してください。

呼吸困難や意識障害など緊急性の高い症状がある場合は、ネット予約を待たず119番への通報を検討する必要があります。

「スマホを覚えればいい」だけでは解決しない

ネット予約は便利ですが、すべての人が同じように使えるわけではありません。家族が近くにいない人もいれば、体調が悪いときに初めて予約サイトへ登録すること自体が難しい人もいます。

一方で、受付スタッフに無制限の対応を求めれば、診療が滞るおそれもあります。だからこそ、電話での相談、窓口での補助、予約外患者への案内など、各医療機関の体制に合った方法を考えることが大切です。

まとめ|ネット予約の便利さと受診の安心を両立できるか

今回のX投稿だけでは、耳鼻科の対応が違法だったかは判断できません。しかし、完全Web予約制をめぐっては過去にも同じような問題が報じられており、高齢者への配慮は継続的な課題となっています。

ネット予約は待ち時間を減らす便利な仕組みです。その便利さを残しながら、使えない人にも相談や受診の道を用意できるか。今回の投稿は、病院の受付のあり方を改めて考えるきっかけになりそうです。

参考資料

厚生労働省・応招義務に関する通知/日本医事新報・完全Web予約制と応招義務/医師法第19条

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