東大総長選で染谷隆夫が1位なのに落選した理由は?藤垣裕子選出の謎

2026年の東京大学総長選考で、学内の意向投票で1位だった染谷隆夫教授ではなく、2位の藤垣裕子教授が次期総長予定者に選ばれました。

染谷教授は1,107票、藤垣教授は553票。差は554票です。なぜこれほど票差がついたのに、結果が逆転したのでしょうか。

結論からいうと、東大の意向投票は総長を直接決める選挙ではありません。最終的には総長選考・監察会議が、面接や所信表明、意向投票などを総合的に考慮して決定します。ただし、今回の選考では具体的な比較理由が十分に説明されていないとして、教職員や文部科学省から説明を求める声が上がっています。

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染谷隆夫教授が1位でも選ばれなかったのはなぜ?

9月28日の意向投票では、1回目の投票を経て上位3人による2回目の投票が行われました。結果は染谷隆夫教授が1,107票、藤垣裕子教授が553票、山本隆司教授が451票、白票が58票でした。

投票総数2,169票のうち染谷教授が過半数を獲得。藤垣教授のほぼ2倍という大きな差でした。

ところが同日、総長選考・監察会議が選んだのは藤垣教授。一般的な選挙を思い浮かべると、不思議に感じる結果です。

東大の「意向投票」は選挙とは違う

ここで押さえておきたいのが、意向投票の位置づけです。

東大では、学内の教職員の支持は重要な判断材料ですが、最多得票者が自動的に総長になる制度ではありません。総長選考・監察会議が候補者資料、推薦書、面接、動画による所信表明、意向投票を踏まえて最終的に選考します。

つまり、制度上は2位の候補者を選ぶこともできます。

ただし「ルール上できる」という説明だけでは、554票差をどう評価したのかという疑問までは解消しません。今回の騒動は、まさにそこから始まりました。

選考会議では藤垣教授が最多の支持

10月16日、選考会議は教職員有志への回答で、意向投票を重要な判断材料の一つとして扱ったと説明しました。

また、最終的な選考では藤垣教授が選考会議委員の最多数の支持を得たとしています。

ただ、候補者同士の具体的な比較や面接の協議内容については、保秘事項であることを理由に詳細を明らかにしていません。

学内の意向投票と選考会議の判断が異なった理由を、外部から十分に検証しにくい状況なのです。

藤垣裕子教授が選ばれた理由は?女性初の総長だから?

藤垣裕子教授は1962年生まれ。科学技術社会論や科学計量学を専門とし、東京大学大学院総合文化研究科で研究を続けてきました。

2021年から2025年には理事・副学長として学生支援、入試、評価、研究倫理などを担当しています。

選考会議は、文系と理系の垣根を越えた連携、学内外のコミュニケーション、国際的な経験などを評価し、大学を変革する能力があると判断しました。

大学運営の実績を重視した選考だったことはうかがえます。ただし、染谷教授との比較で何が決定打になったのかは、なお明確ではありません。

「女性を選ぶためだった」という説に根拠はある?

藤垣教授が2027年4月に就任すれば、東京大学で初めての女性総長となります。

そのため、SNSでは「女性初の総長を誕生させたかったのでは」といった推測も見られます。

しかし、性別を理由に藤垣教授が優先されたことを示す確かな証拠は確認できません。選考会議側も、性別は選考の議論の対象にならなかったと説明しています。

今回の争点は、女性が総長になること自体ではありません。大差がついた学内投票を踏まえ、どのような判断で藤垣教授が選ばれたのか。その説明が十分かどうかです。

教職員523人が説明を要求、文科省も異例の検証要請

選考結果に疑問を持った教職員有志は、10月13日に選考会議へ説明を求める要望書を提出しました。提出時点の賛同者は523人です。

求めたのは、意向投票の結果をどう考慮したのか、候補者をどう比較したのかといった選考過程の説明でした。

選考会議は16日に回答しましたが、具体的な協議内容は保秘事項とされ、疑問が十分に解消されたとはいえない状況が続きました。

10月20日、文科省が東大に検証を要請

そして10月20日、文部科学省が動きます。

関芳弘文科相は記者会見で、東大側に選考経緯の検証を求めたことを明らかにしました。同日午前には文科省の合田哲雄高等教育局長が東大を訪れ、検証を求める文書を手渡しています。

共同通信によると、文科省が大学の学長選考について検証を求めるのは初めてという異例の対応です。

文科相は、選考過程や理由について明確な説明がないとの声が多いことを問題視し、大学側に説明責任を果たすよう求めました。

もっとも、文科省が選考結果を無効としたわけではありません。検証の要請と、総長予定者の決定取り消しは別の話です。

2020年の総長選考でも問題が起きていた

実は、東大の総長選考をめぐる混乱は今回が初めてではありません。

2020年にも候補者の選抜過程をめぐって疑問が噴出。匿名の告発文の扱いや選考会議の運営が問題となり、検証委員会が会議運営の一部に妥当性を欠く点があったと認定しています。

そうした経緯もあって、今回は選考基準や意向投票結果の公開などが進められました。それでも再び説明不足が問題となったことは、大学の意思決定の難しさを浮き彫りにしています。

藤垣裕子教授の就任はどうなる?

藤垣教授は文部科学大臣による任命を経て、2027年4月1日から2033年3月31日までの6年間、第32代総長を務める予定です。

2026年10月20日時点で、総長予定者の決定が撤回されたという公式発表はありません。

今後は、東大側の検証で何が明らかになるのか、そして教職員や社会が納得できる説明が示されるのかが焦点となります。

意向投票で1位になれば必ず総長になれるわけではない。それは制度として理解できます。ただ、投票した人たちにとって、自分たちの意思がどのように扱われたのかは気になるところでしょう。

誰が選ばれたかだけでなく、なぜ選ばれたのか。今回の東大総長選考は、大学のトップを決める仕組みそのものに問いを投げかけています。

参考資料

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