サイレント離職は何が悪い?昔からあったのに今問題になる理由

「サイレント離職」という言葉が話題になっています。会社に不満を言わず、ある日突然「辞めます」と告げる社員のことです。

でも、ちょっと待ってください。転職先が決まるまで会社に黙っているなんて、昔から普通にあったことではないでしょうか。

そもそも、社員は辞める前に不満を伝えなければいけないのでしょうか。結論から言えば、黙って転職を考えること自体は悪いことではありません。問題は、会社が社員の不満や離職の兆候に気づけないまま、人材を失ってしまう点にあります。

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サイレント離職とは?静かな退職との違い

サイレント離職は、職場への不満や退職の意向をほとんど表に出さず、退職を申し出ることを指す言葉です。法律上の特別な退職区分ではなく、最近の職場の問題を説明するために使われています。

例えば、仕事はきちんとこなし、会議でも反対意見を言わず、上司との面談でも「特にありません」と答える社員。ところがある日、転職先が決まったと退職を申し出ます。

上司にとっては突然でも、本人は何カ月も前から気持ちを整理していたのかもしれません。

「静かな退職」は会社を辞めない

似た言葉の「静かな退職(Quiet Quitting)」は、実際に退職するのではなく、出世や過度な頑張りを求めず、担当業務の範囲で働く姿勢を意味します。財務省が2026年3月に公開したコラムでも、職務の範囲内で責任を果たす働き方として紹介されています。

一方、サイレント離職は最終的に職場を離れる点が違います。働き方の変化と、実際の退職を混同しないことが大切です。

不満を言わない社員は多い?最新調査に表れた本音

2026年10月に発表されたJob総研の「2026年 人事評価の実態調査」は、会社に不満を伝えない社員の心理を考えるうえで興味深い内容でした。

調査は9月2~8日に、全国の20~50代の就業中の登録者476人を対象に実施。人事評価制度があると答えた387人のうち、73.0%が評価に不満を感じた経験があると回答しています。

さらに、不満を感じた283人のうち69.2%は、その不満を会社に伝えていませんでした。伝えない理由の最多は「伝えても変わらないと思うから」で42.4%。実際に不満を伝えて改善された人は4.6%にとどまっています。

数字だけを見ると、社員が黙っている理由が少し見えてきます。「特にありません」は、本当に不満がないという意味とは限らないのです。

評価がきっかけで転職した人も

同じ調査では、人事評価制度がある387人のうち50.9%が、評価をきっかけに転職を考えた経験があると答えました。その197人のうち44.2%は、実際に転職したと回答しています。

ただし、これらは人事評価に関する調査であり、サイレント離職の発生率を示すものではありません。評価への不満が、転職を考えるきっかけの一つになっていることを示す数字です。

調査の詳しい内容はJob総研の公式発表で紹介されています。

サイレント離職は昔からあったのでは?

「サイレント離職」という名前は新しく聞こえますが、辞める直前まで転職活動を周囲に話さない社員は、昔からいたはずです。

転職先が決まる前に上司へ相談すれば、引き留められたり、職場で気まずくなったりする可能性もあります。だからこそ、次の仕事が決まってから報告するのは自然な選択ともいえるでしょう。

では、なぜ今になって注目されるのでしょうか。

一つには、人手不足や採用・育成の負担を背景に、会社が社員の離職をより深刻な経営課題として受け止めていることが考えられます。社員が一人辞めれば、残された人の仕事が増え、後任の採用や引き継ぎも必要です。

また、企業が従業員の働きがいや会社への愛着を重視するようになり、「不満を言わない=満足している」とは限らないことにも注目が集まっています。

新しい現象が突然生まれたというより、昔からあった退職のあり方に、企業が改めて危機感を持ち始めたと考えると分かりやすいかもしれません。

黙って辞める社員は悪い?本当に考えるべき問題

会社からすると、突然の退職は困るでしょう。特に重要な仕事を任せていた社員なら、現場への影響も小さくありません。

しかし、だからといって社員に「辞める前に不満を全部話すべきだ」と求めるのは違う気がします。

何度も相談したのに変わらなかった。評価の理由を尋ねても曖昧な答えしか返ってこなかった。そんな経験が続けば、もう会社に何かを期待するのはやめようと考える人もいるでしょう。

もちろん、退職の申し出や引き継ぎは、雇用契約や就業規則、法律に沿って進める必要があります。ただ、退職を決めるまでの気持ちや転職活動の経過まで、逐一報告する義務があるわけではありません。

会社が怖いのは「何も言わない職場」

むしろ気になるのは、会議でも面談でも誰も不満を口にしない職場です。

意見が出ないのは、みんなが納得しているからなのか。それとも、言っても無駄だと諦めているからなのか。この違いは大きいでしょう。

会社が離職を防ぎたいなら、社員に本音を言わせることより、意見を伝えた後に何が変わるかを示すことが重要です。

評価の基準を説明する。改善できない要望にも理由を伝える。面談で出た意見を放置しない。地味ですが、こうした積み重ねが信頼につながるのではないでしょうか。

まとめ|サイレント離職より深刻なのは社員の諦めかもしれない

サイレント離職は、社員が不満を表に出さないまま会社を辞めること。似た言葉の「静かな退職」とは違い、実際に離職する点が特徴です。

ただ、黙って転職活動をすることは、昔から珍しい行動ではありません。社員には次の仕事を選ぶ自由がありますし、退職前に会社を改善する責任まで背負う必要はないでしょう。

会社にとって本当に深刻なのは、社員が辞めることそのものより、社員が「何を言っても変わらない」と思うようになってしまうことなのかもしれません。

「なぜ突然辞めたのか」と驚く前に、「なぜ本音を話してもらえなかったのか」を考える。サイレント離職という言葉から見えてくるのは、そんな職場の課題です。

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