カフェインレスコーヒーの市場が拡大しています。以前は妊娠中や授乳中の人が選ぶイメージがありましたが、最近は20代をはじめ、普段からコーヒーを飲む人にも広がっています。
なぜ、あえてカフェインを抜いたコーヒーが人気なのでしょうか。背景には「コーヒーをやめる」のではなく、時間帯に合わせて飲み分ける習慣がありました。
カフェインレス市場はなぜ拡大?数字から見る変化
UCC上島珈琲が2026年2月に発表した資料によると、国内のカフェインレスコーヒー市場は2020〜2024年に年平均9.4%成長し、市場規模は約1.5倍になりました。2025年のカフェインレスコーヒー輸入量も過去最多です。
また、2026年10月19日のTVQ九州放送は、2025年の販売金額が63億円に達し、6年間で約2倍になったと報じています。市場規模と輸入量は異なる指標ですが、どちらからも需要の広がりがうかがえます。
興味深いのは、かつて中心的な利用者と考えられていた妊娠・授乳中の人だけで伸びているわけではないことです。
UCCの2024年12月調査では、カフェインレスを選ぶ理由として「睡眠に気を使っている」が38.5%、「体にやさしいと感じる」が30.6%。「妊娠・授乳中・妊活のため」は6.5%でした。これはカフェインレス飲用経験者278人を対象にした調査で、全国民の割合ではありません。
つまり、カフェインを避ける必要がある人だけの飲み物から、日々の体調や生活リズムを考えて選ぶ飲み物に変わってきたのです。
若者がデカフェを選ぶ理由は?「飲み分け」が新しい習慣に
最近広がっているのが「カフェインコントロール」という考え方。コーヒーを完全にやめるのではなく、飲む量や時間を調整することです。
例えば、朝は通常のコーヒー、夕方からはカフェインレス。仕事の合間にはいつもの一杯を楽しみ、夜は眠りへの影響を考えて切り替える。そんな飲み方です。
UCCの調査では、カフェインレスコーヒーを飲んだ経験がある人の95%が、通常のコーヒーとカフェインレスの両方を日常的に飲んでいました。2025年の同社調査でも、20代を中心にカフェインの摂取量を意識する傾向が報告されています。
2026年1月にマイボイスコムが実施した調査でも、カフェインの摂取量をコントロールしている人は4割強。夜や就寝前にカフェインを控える人は3割強でした。
コーヒー好きがコーヒーを卒業するのではありません。むしろ、好きだからこそ一日を通じて楽しめる方法を探している。ここに新しい需要があるようです。
カフェインレスなら寝る前に飲んでも大丈夫?
カフェインレスを選ぶ大きな理由が睡眠への配慮です。カフェインには覚醒作用があり、摂取する時間や量によっては寝つきや睡眠に影響することがあります。
ただし、カフェインレスは必ずしもカフェインゼロではありません。国内では、カフェインを90%以上除去したコーヒーがカフェインレスとして扱われます。
例えば、通常のコーヒーにカフェインが100mg含まれていると仮定すれば、90%除去した場合でも10mgは残ります。これは説明用の計算例であり、実際の含有量は商品や抽出条件によって変わります。
「デカフェ」「カフェインレス」と書かれていても、完全にゼロとは限らないのです。一方、「ノンカフェイン」は原料自体にカフェインを含まない飲料などに使われる表現です。
カフェインへの感受性には個人差があります。デカフェに替えれば必ず熟睡できる、何杯飲んでもよい、と考えるのは早計でしょう。
それでも、夜のコーヒー習慣を楽しみながらカフェイン摂取量を抑えたい人には、有力な選択肢です。
味の進化と買いやすさも市場拡大を後押し
もう一つ見逃せないのが、おいしさの変化です。
カフェインを取り除く工程では、コーヒーの香りや味わいも変わりやすく、以前は「普通のコーヒーより物足りない」という印象を持たれることがありました。
メーカー各社はカフェイン除去や焙煎の工程を工夫し、コーヒーらしい香りやコクを追求しています。UCCも2026年3月に家庭用カフェインレスシリーズをリニューアルしました。
外食でも選択肢が広がっています。ココスのドリンクバーでは、カフェインレスのコーヒーだけでなく、エスプレッソ、カフェラテ、カプチーノも提供されています。
福岡を拠点とするREC COFFEEでは、2021年と比較して2026年のカフェインレスを選ぶ利用客の割合が約4.8倍になったとTVQが報じました。
味がおいしくなり、飲める場所が増えれば、試す人も増える。気に入った人が繰り返し購入することで、市場がさらに広がっていくのでしょう。
カフェインレス人気は今後も続く?
カフェインレスコーヒーが伸びているのは、単なる健康ブームだけでは説明できません。
在宅勤務などでコーヒーを飲む機会が増えたこと、睡眠を大切にする意識が広がったこと、若い世代がカフェイン摂取量を管理し始めたこと。そして、デカフェそのものがおいしくなったことが重なっています。
朝は通常のコーヒーで気分を切り替え、夜はデカフェでくつろぐ。そんな選び方がもっと身近になるかもしれません。
カフェインレスは、コーヒーを我慢するための商品から、コーヒーをもっと自由に楽しむための商品へ。市場拡大の本当の理由は、その価値観の変化にありそうです。
