シャッターが下りた店が並ぶ商店街。その中で、なぜか昔ながらのタバコ屋だけが営業していることがあります。
店番をする人はいるのに、お客さんはほとんど見かけない。「いったい何で生活しているの?」と気になりませんか。
実は、客が少ないタバコ屋が残る理由は、必ずしも商売が儲かっているからではありません。自宅兼店舗で家賃がかからない、固定客がいる、店以外にも収入があるなど、いくつかの事情が考えられます。ただし、どれも個々の店に当てはまるとは限りません。
客がいないタバコ屋はなぜ潰れない?考えられる5つの理由
自宅兼店舗で家賃がかからない
長く続く個人商店には、自宅の一角を売り場にしている店があります。建物が自己所有で借入金も返済済みなら、毎月の家賃負担はありません。
例えば月15万円の家賃が必要な店と比べれば、年間180万円の差です。もちろん持ち家にも固定資産税や修繕費はかかりますが、固定費が小さいほど売上が少なくても営業を続けやすくなります。
年金など店以外の収入がある
高齢の店主が年金を受け取りながら営業している可能性もあります。店の利益だけで生活費をすべて賄わなくてよいなら、営業を続けるために必要な売上も変わります。
財務省の2024年度「たばこ小売販売業調査」では、経営者の70代が24.6%、60代が24.3%。60~70代だけで約半数を占めます。ただし、調査にはコンビニなども含まれ、個々の店主の年金受給状況までは分かりません。
見えないところに固定客がいる
店の前を通った数分間に客がいなくても、一日中売れていないとは限りません。決まった銘柄を買う常連客が立ち寄ったり、まとめ買いをしたりする場合があります。
また、店頭以外で販売するケースもあります。人通りだけで店の売上を判断できないのです。
自動販売機で売っている
昔ながらのタバコ屋といえば、店先の自販機を思い浮かべる人も多いでしょう。店主が接客していない時間も販売できる仕組みです。
もっとも、財務省の2024年度調査で自販機を設置している小売業者は26.7%。タバコを売る店のすべてが自販機頼みというわけではありません。
タバコ以外の商品や仕事で収入を得ている
ライター、飲み物、お菓子などを一緒に売る店もあります。家族の別収入で家計を支えている場合も考えられます。
2024年度の財務省調査では、主にタバコを販売する「たばこ専業店」は全体の10.2%。残りにはコンビニやスーパー、酒販店なども含まれます。これは古い個人店の収入構成を直接示す数字ではありませんが、タバコ販売には多様な営業形態があると分かります。
タバコ屋は1日何箱売れば儲かる?利益を試算
では、タバコの販売そのものはどれほど儲かるのでしょうか。
仮に1箱600円、粗利益率10%とすると、1箱売ったときの粗利益は60円。1日30箱なら月5万4,000円、50箱なら月9万円、100箱でも月18万円です(いずれも30日営業の場合)。
| 1日の販売数 | 月間売上 | 月間粗利益 |
|---|---|---|
| 10箱 | 18万円 | 1.8万円 |
| 30箱 | 54万円 | 5.4万円 |
| 50箱 | 90万円 | 9万円 |
| 100箱 | 180万円 | 18万円 |
※1箱600円、粗利益率10%とした仮定の計算です。実際の仕入れ条件や銘柄ごとの利益を示すものではありません。粗利益から電気代や設備費などの経費を差し引く必要があります。
意外なのは、100箱売っても月18万円の「粗利益」という点。これがそのまま店主の手取りになるわけではありません。
財務省の2024年度調査では、タバコの年間売上高が100万円以下の小売業者が22.9%いる一方、1,201万円以上も37.8%いました。小売業者全体の数字なので個人店だけの比較はできませんが、売上規模に大きな幅があることが分かります。
2026年にタバコ自販機も転機!taspo終了でどう変わった?
タバコ屋を取り巻く環境は変わっています。2026年3月31日には、自販機で成人を識別する「taspo」のサービスが終了しました。
終了の直接の理由は、taspoが利用していたNTTドコモの通信回線「FOMA」の終了です。taspoカードは2026年4月以降使えなくなり、自販機で販売を続けるには財務省が認定する別の成人識別装置が必要になりました。
運転免許証やマイナンバーカードを利用して年齢を確認する自販機もありますが、従来の機械をそのまま使い続けられるわけではありません。
2026年4月には全国たばこ販売協同組合連合会が、不要になったtaspo自販機の撤去依頼先を案内しています。古い店にとっては、設備を更新するか、撤去するかという判断も必要になっています。
タバコ屋は今後も生き残れる?後継者不足という問題
店が残っているからといって、経営に余裕があるとは限りません。
財務省の2024年度調査では、後継予定者が「いない」と答えた割合が63.0%でした。なお、この後継者に関する集計は個人経営または家族経営の法人を対象としたものです。
家賃がかからず、常連客がいて、店主が元気なうちは営業を続けられても、引退後に引き継ぐ人がいなければ閉店する可能性があります。
一方で、珍しい銘柄を扱うなど、専門店として独自の強みを持つ店もあります。これからは「細く長く続ける店」と「専門性で客を集める店」で、経営の姿も違ってくるのでしょう。
まとめ:潰れないタバコ屋と儲かるタバコ屋は違う
客がいないように見えるタバコ屋が残る背景には、家賃のかからない店舗、長年の固定客、年金など店以外の収入といった事情が考えられます。
ただし、実際にどの理由で営業を続けられているかは、その店の経営を知らなければ分かりません。
「潰れていない=儲かっている」ではないというのが、この疑問のポイントです。
商店街でひっそり営業するタバコ屋。何も変わっていないように見えて、店の内側では時代の変化と向き合っているのかもしれません。