南青山の銭湯が600円で続く謎!清水湯は地主なのか?

表参道駅から徒歩約2分。高級ブランド店やオフィスが並ぶ南青山に、大人600円で入れる銭湯があります。

その名は「南青山 清水湯」。Xでは「この立地で利益が出るの?」「地主だから続けられるのでは?」といった疑問が話題になりました。

結論からいうと、600円という料金は東京都の銭湯料金制度によるものです。一方、清水湯の土地・建物の所有者や家賃収入については、公開情報から確認できません。

ただ、経営の歴史を調べると、4代目が客離れを食い止めようと大胆な建て替えを決断したことが分かりました。安い入浴料の裏には、老舗ならではの工夫がありました。

目次

南青山の清水湯はなぜ600円?値段には上限がある

清水湯の所在地は東京都港区南青山3-12-3。表参道駅A4出口から徒歩約2分という、都心の一等地です。

これほど便利な場所なのに入浴料は大人600円。実は、清水湯が周辺相場を無視して特別に安くしているわけではありません。

東京都は、物価統制令の対象となる一般公衆浴場、いわゆる銭湯の基本入浴料金に上限を設けています。2026年8月1日から大人料金の上限は550円から600円に引き上げられました。6歳以上12歳未満は200円、6歳未満は100円が上限です。

つまり、表参道の一等地にあっても、基本入浴料を自由に1,000円、2,000円へ値上げすることはできないのです。スーパー銭湯やスパなど、異なる区分の施設とは料金の仕組みが違います。

もっとも、600円は「経営に余裕がある」という意味ではありません。東京都の料金改定では、人件費や電気・ガス料金などの上昇が考慮されています。銭湯は大量のお湯を沸かすため、燃料費や水道代の負担も小さくありません。

参考:東京都「公衆浴場入浴料金の統制額について」

清水湯は地主なのか?明治時代から続く歴史を調査

Xでは「土地や建物を所有しているから家賃がかからないのでは」「上階の賃貸収入があるのでは」といった推測が見られました。

確かに、建物を所有し、別の区画から賃料を得ているなら、銭湯経営の収支に影響する可能性はあります。ただし、清水湯の土地・建物の登記上の所有者や賃貸契約、賃貸収入は今回確認できていません。地主説はあくまで推測です。

一方で、清水湯が非常に長い歴史を持つことは公式情報で確認できます。

2024年4月22日の公式ブログによると、1902年生まれの2代目が生まれた頃には、すでに銭湯を営んでいたそうです。正確な創業年は不明ですが、明治時代から続く老舗ということになります。

興味深いのは、最初から現在の場所にあったわけではないこと。2009年のシブヤ経済新聞では、かつて現在のキラー通り付近にあり、1962年に道路整備に伴って南青山へ移転したと報じられています。

現在の建物についても、2008年の改修・建て替えを経て、2009年4月22日にリニューアルオープンしたと当時の報道にあります。公式ブログでは2024年4月に「リニューアルして16年」と記しており、年の数え方に違いがありますが、いずれも2008~2009年頃の大規模な刷新を指しています。

長く同じ地域で商売を続けてきたことは確かでも、それだけで現在の土地所有者や収益構造まで分かるわけではありません。

参考:清水湯公式ブログ/シブヤ経済新聞の2009年記事

4代目はなぜ建て替えた?銭湯を生き残らせる経営判断

清水湯の歴史を調べるうえで、特に注目したいのが4代目経営者・大倉正敬さんの言葉です。

生活衛生関係営業の業界誌『生衛ジャーナル』2010年5月号では、常連客の高齢化などで銭湯の利用者が減るなか、大倉さんが現状を変えるために建て替えを決意したと紹介されています。

家庭にお風呂があるのが当たり前になった時代。わざわざ銭湯まで足を運んでもらうには、昔ながらの入浴施設というだけでは足りない。そこで目指したのが、健康や美容にも関心のある人が楽しめる銭湯でした。

全館に軟水を使用し、高濃度炭酸泉、シルク風呂、ジェットバス、サウナなどを導入。従来の常連客だけでなく、会社員やランナー、若い世代にも利用してもらえる施設へと変えたのです。

2009年の東京ウォーカーの記事によれば、大倉さんにはアパレル業の経験もありました。南青山という街に合うデザインや新しい客層への発信を考えるうえで、興味深い経歴です。

「地主だから営業できる」という単純な話ではなく、利用者の減少という課題に向き合い、設備とサービスを変えてきた歴史が見えてきます。

参考:『生衛ジャーナル』2010年5月号/東京ウォーカーの2009年記事

600円だけではない!サウナや物販も清水湯の収入源

銭湯の基本入浴料には上限がありますが、サウナやタオルなどの付帯サービスは別料金です。

清水湯の公式料金表では、通常入浴600円に対して、サウナコースは入浴料込み1,180円。レンタルタオル付きのサウナコースは1,380円となっています。

ほかにもレンタルタオル310円、飲み物や石けん類の販売、コインランドリーなどがあります。公式サイトには生ビールやラムネ、着替え用の衣類まで掲載されており、手ぶらで立ち寄る利用者にも対応しています。

例えば、通常入浴600円とサウナコース1,180円の差は580円。サウナ利用者が増えれば、基本入浴料だけの場合より客単価は高くなります。ただし、設備の維持費や人件費も必要なので、追加料金がそのまま利益になるわけではありません。

東京都や港区には銭湯の経営を支える制度もありますが、清水湯が個別にどの支援をどれだけ受けているかは確認できません。

仮に600円の入浴客が1日200人、月26日利用した場合、単純計算の売上は312万円。しかし、実際にはサウナ利用者や回数券利用者、子ども料金もあり、清水湯の来客数も公表されていません。この数字はあくまで計算例で、実際の月商や利益ではありません。

結局、銭湯の採算を知るには、来客数だけでなく光熱費、人件費、設備投資、土地・建物に関する費用なども必要です。外観や料金だけで「儲かっている」「赤字のはず」と判断することはできないのです。

参考:清水湯公式料金表

まとめ:南青山で清水湯が続く理由は「地主説」だけではない

南青山の清水湯が600円で入れるのは、東京都の銭湯料金制度があるためです。

地主説や上階からの家賃収入については確認できませんでしたが、清水湯には明治時代から続く歴史があり、4代目が利用者の減少に対応するため、施設を大きく刷新したことが分かりました。

サウナや物販など、入浴料以外のサービスも充実しています。ただし、これらが実際にどれほど利益を生んでいるかは不明です。

高級ブランド店が並ぶ表参道のすぐそばで、誰でも600円でお風呂に入れる。その光景の裏には、価格規制だけでなく、時代に合わせて変わろうとしてきた老舗銭湯の歴史がありました。

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