2026年10月21日、井林辰憲国土交通大臣が、訪日外国人向けの免税制度でステーブルコインを活用する可能性に言及したと報じられました。
ステーブルコインとは、日本円や米ドルなどの価値に連動するよう設計されたデジタル通貨です。今回の話は、外国人観光客が仮想通貨で買い物できるようになる、というだけのニュースではありません。
注目すべきは、買い物の後に返される消費税をデジタル通貨で受け取るという仕組みです。2026年11月1日に始まる新しい免税制度と、JPYCという日本企業の取り組みをわかりやすく解説します。
ステーブルコインで免税返金とは?2026年11月から何が変わる?
外国人旅行者などの免税購入対象者は、これまで条件を満たせば、免税店で商品を購入する際に消費税を差し引いた価格で買い物できました。
ところが2026年11月1日の購入分からは「リファンド方式」に変わります。まず税込価格で商品を購入し、出国時に税関で国外への持ち出しを確認してもらった後、消費税相当額を返金してもらう方式です。
11万円の買い物なら、返金はいくら?
例えば、消費税率10%の対象商品を税込11万円で購入した場合を考えてみましょう。
- 従来:免税条件を満たせば税抜10万円で購入
- 新制度:店頭では税込11万円を支払う
- 出国時:購入日から90日以内に税関で持ち出し確認を受ける
- 確認後:免税店または委託先から消費税相当額1万円が返金される
条件を満たせば最終的な負担は同じですが、返金を受けるための手続きが増えるわけです。制度変更の背景には、免税品の国内転売など不正利用を防ぐ狙いがあります。
ここで新たな課題になるのが「外国人旅行者が帰国する際、どうやって返金するか」という問題です。
なぜステーブルコインを使うの?
従来のカード返金や海外送金では、事業者によって手数料や処理時間、返金先の管理などが負担になる場合があります。
ステーブルコインなら、対応するデジタル財布(ウォレット)に送金する方法が考えられます。国際送金の一部の手間を減らし、送金状況を確認しやすくなる可能性もあります。
ただし、すべての免税店がステーブルコインで返金するようになるわけではありません。実際の返金方法は免税店や委託先によって異なり、ウォレットの準備、本人確認、手数料などの課題も残ります。
JPYCとは?日本免税との提携で何を目指す?
今回のニュースで名前が挙がっているJPYCは、日本円に連動するステーブルコイン「JPYC」を発行・運営するJPYC株式会社です。
米ドルに連動するステーブルコインとは異なり、日本円を基準に金額を把握できるのが特徴。もっとも、銀行預金と同じものではなく、利用にはウォレットの管理や対応サービスへの理解が必要です。
2026年3月には免税還付モデルの構築を発表
実はJPYCは、今回の大臣発言より前から動いていました。2026年3月3日、株式会社日本免税との業務提携を発表しています。
両社が目指すのは、税関での持ち出し確認データと連携し、旅行者のウォレットにJPYCを送付する免税還付モデルです。クレジットカード番号や銀行口座情報を店舗側で扱う負担の軽減などを掲げています。
ただし、これは民間企業による構築計画です。政府がJPYCを全国共通の還付手段として正式採用したという意味ではありません。
受け取ったJPYCは海外でも使える?
ここも気になるところです。日本円に連動するJPYCを受け取っても、帰国後に自国の店舗でそのまま使えるとは限りません。
両社の構想では、JPYCを米ドル連動型のUSDCなどに交換することも想定されています。ただし、交換できるかどうかは居住国や利用するサービス、規制によって異なります。交換時の費用や為替レートにも注意が必要です。
「素早く返金できる」だけでなく「受け取った旅行者が簡単に使えるか」が普及の鍵になるでしょう。
日本人にも影響は?メリットと今後の課題
「外国人観光客の免税なら、自分には関係ない」と感じる人もいるかもしれません。
今回の制度は、外国人旅行者など一定の条件を満たす免税購入対象者のためのものです。日本国内で暮らす一般の人が、普段の買い物で消費税を返してもらえる制度ではありません。
一方、百貨店や家電量販店、ドラッグストアなど免税販売を行う事業者には影響があります。新制度では税関確認後の返金対応が必要になり、決済・返金システムの整備が重要になるためです。
PayPayやクレジットカードの代わりになる?
今回の話だけで、ステーブルコインが既存の決済手段に取って代わるとはいえません。そもそも中心となっているのは店頭での支払いではなく、購入後の消費税還付です。
ただし、免税還付という実際の利用場面で普及すれば、デジタル通貨が投資以外の目的で使われる一例になるかもしれません。
便利そうでも、課題は少なくない
海外旅行者の中には、ウォレットを使ったことがない人もいるでしょう。スマートフォンの操作、誤送金、紛失時の対応、各国の法規制など、導入前に検討すべき問題があります。
また、ステーブルコインだからといって送金手数料が必ずゼロになるわけではありません。免税店にとっての導入費用や運用負担も含め、実際に使いやすい仕組みになるかが問われます。
まとめ|免税制度の変更がデジタル通貨普及のきっかけに?
2026年11月1日から日本の免税制度は、購入時に消費税を免除する方式から、税関確認後に返金するリファンド方式へ変わります。
その返金方法の一つとして期待されているのがステーブルコインです。JPYCと日本免税はすでに還付モデルの構築に取り組んでいますが、全国での導入が決まったわけではありません。
ステーブルコインと聞くと投資の話に感じますが、今回のテーマは旅行者が税金の返金を受け取るという実用的なもの。新制度の開始後、どの店舗やサービスで利用できるようになるのか注目したいところです。
