お酒を飲んだ記者が、そのまま車のハンドルを握る。そんなニュース映像を見て「飲酒運転なのに違法じゃないの?」と驚いた人もいるのではないでしょうか。
2026年10月、琉球朝日放送(QAB)が紹介したのは、自動車学校で行われた飲酒運転体験教室。実は、一般車両が自由に出入りできない閉鎖コースでは、道路交通法の飲酒運転禁止規定が原則として適用されない場合があります。
ただし「私有地なら飲酒運転していい」という話ではありません。今回の映像とともに、法律上の違いを整理します。
飲酒運転体験はなぜ合法?自動車学校でできる理由
鍵になるのは、道路交通法でいう「道路」の範囲です。同法の道路には公道だけでなく、不特定の人や車が自由に通行できる場所も含まれます。
一方、関係者以外が自由に入れない自動車学校の閉鎖コースは、通常、道路交通法上の道路に当たらないと考えられます。その場合、同法65条の飲酒運転禁止規定は原則として適用されません。
今回のニュースでは、教官が同乗し、自動車学校のコースで運転体験を行っていました。ただし、施設の実際の管理状況などによって法的判断は変わるため、映像だけで個別の適法性を断定することはできません。
私有地なら飲酒運転しても大丈夫?
ここは誤解しやすいところです。たとえ私有地でも、一般の車や歩行者が自由に通行する駐車場や通路は、道路交通法上の道路に該当する可能性があります。
また、道路交通法の飲酒運転禁止規定が適用されない場所でも、事故を起こせば損害賠償など別の責任が生じ得ます。「公道ではないから安全」というわけではありません。
沖縄の女性記者が飲酒運転を体験!実際の映像
話題のきっかけは、QABが2026年10月15日に放送したニュースです。豊見城市で開かれた体験教室に、報道関係者や飲料メーカー関係者など約20人が参加しました。
中村月夢記者は約1時間でビール4缶とワイン4杯を飲み、自動車学校のコースで運転を体験。乗車前の呼気アルコール濃度は1リットル当たり0.5ミリグラムでした。
運転前には自信を見せていた中村記者。L字クランクは慎重に通過したものの、路上の人形を避ける場面では教官のブレーキ指示への反応が遅れ、人形に衝突してしまいました。
運転後には左右の判断も難しくなっていたと振り返っています。自分では大丈夫と思っていても、反応が追いつかなくなる。その怖さが伝わる内容でした。
体験の詳しい経緯はQABの公式ニュースでも確認できます。
呼気0.5mg/Lはどのくらい危険?2026年の法改正も
2026年の法改正では、危険運転致死傷罪の飲酒類型について、呼気1リットル中0.5ミリグラム以上、または血液1ミリリットル中1.0ミリグラム以上という数値基準が設けられました。これは酒気帯び運転の取締基準とは別のもので、事故による死傷結果がない場合に、その数値だけで危険運転致死傷罪が成立するという意味ではありません。
一方、道路交通法の酒気帯び運転は呼気0.15mg/L以上が罰則の対象です。酒酔い運転は数値だけではなく、アルコールの影響による運転能力の状態などから判断されます。
つまり今回の0.5mg/Lは、一般の道路で運転すれば非常に重大な違反となる水準。体験の目的は、その危険を実感してもらうことにあります。
改正内容は神奈川県警の解説や警察庁の飲酒運転防止ページでも案内されています。
「合法飲酒運転」がXで話題に!注目された理由は?
この体験取材はXでも拡散され、約1時間でビール4缶とワイン4杯を飲んだ量や、運転前に自信を見せていた記者の様子が注目されました。「合法飲酒運転」という言葉だけを見ると驚きますが、実際は飲酒運転の危険性を伝えるための体験教室です。
映像で印象的なのは、記者がL字クランクを通過できた一方、教官からブレーキを指示されても人形への衝突を避けられなかったこと。運転できているつもりでも、とっさの判断や反応が遅れる危険性がよく分かります。
また、QABによると沖縄県は人身事故に占める飲酒絡みの割合が5年連続で全国ワースト。2025年度には1097人が飲酒運転で検挙され、2026年8月末時点でも606件の検挙があったと報じています。こうした地域の課題を背景に行われた啓発活動でした。
まとめ:体験教室と一般道路の飲酒運転は別の話
お酒を飲んで車を運転するという光景には驚きますが、今回のような閉鎖コースでの体験と、一般道路での飲酒運転は法律上の扱いが異なります。
ただし、場所が私有地というだけで飲酒運転が認められるわけではありません。今回の映像が伝えているのは、酔った本人の自信ほど当てにならないものはない、ということではないでしょうか。
実際の道路では、飲んだら運転しない。その当たり前の約束の大切さを、改めて考えさせられるニュースでした。
