スーパーのウインナー売り場でよく見かける、2つの袋をテープでくっつけた「2個束」。よく考えると、なぜ最初から1つの大きな袋に入れないのでしょうか。
実はこれには、開封前のおいしさを保ちながら少量ずつ使えることと、2袋セットにすることで「お買い得感」が生まれたことが関係しています。
さらに現在の2個束が定着していった時期には、1985年に発売された日本ハム「シャウエッセン」の存在もありました。
ウインナーが2袋をテープでくっつけてある理由は?
ウインナーが小さな袋2つに分けられている大きな理由は、開封後の品質にあります。
伊藤ハムは公式サイトで、ウインナーの袋には窒素などの気体を入れ、袋の中の酸素をなくすことで、酸化や細菌の増殖を防ぎ、おいしさを保っていると説明しています。
ところが袋を開封すると、この効果はなくなってしまいます。
そのため、最初から全部を大きな1袋に入れるのではなく、1袋あたりを少ない量にして2袋セットにすることで、少しずつ食べられるようにしているというわけです。
例えば朝食で数本、お弁当で数本といった使い方なら、1袋だけ開けて、もう1袋は未開封の状態で残せます。
一見すると「2袋に分ける必要ある?」と思ってしまいますが、家庭での使いやすさと品質保持を両立させた包装だったのです。
なぜ「テープで2袋」という独特な売り方になった?
では、2袋に分けるとしても、なぜわざわざテープでくっつけるのでしょうか。
ここで興味深いのが、シャウエッセンの歴史です。
日本ハムの担当者は過去の取材で、1985年にシャウエッセンが発売された当時は1パックでの販売が多かったものの、2個をテープで巻いて販売すると「お買い得感」もあって非常によく売れたと説明しています。
同社内では、1985年ごろから徐々に2個パックの販売が増えていったと伝えられているそうです。
ハムやソーセージは冷蔵庫に常備しやすい食品です。1袋を食べ終えても、もう1袋をストックしておける2個束は、消費者にとっても使いやすかったのでしょう。
現在の2個束には、次のようなメリットがあります。
- 未開封の袋を残しておける
- 少量ずつ使いやすい
- 冷蔵庫にストックしやすい
- 2袋セットにすることでお買い得感が出る
品質を保ちやすいだけでなく、売り場で「2袋セット」という魅力を伝えやすい販売方法でもあったと考えられます。
シャウエッセンが2袋セットの元祖なの?
ここは注意が必要です。
「ウインナーを2袋セットにしたのはシャウエッセンが最初」と紹介されることがありますが、確認された事実ではありません。
日本ハム側も取材に対して、2袋セットについて同社が初めてかどうかは定かではないと回答しています。
一方で、シャウエッセンが発売された1985年ごろから2個パックの販売が徐々に増えていったことは、同社内で伝えられているとのことです。
そのため、「シャウエッセンが元祖」「シャウエッセンが業界に広めた」と断定するのではなく、シャウエッセン発売当時の1985年ごろから2個パックが徐々に増えていったと捉えるのが正確です。
シャウエッセンの袋がパンパンなのにも理由がある
もう一つ気になるのが、ウインナーの袋がパンパンに膨らんでいることです。
シャウエッセンの場合、袋には窒素ガスが充填されています。
日本ハムの説明によると、窒素ガスには酸素を追い出しておいしさや鮮度を保つ目的があります。また、袋にゆとりを持たせることで、流通時に商品を保護する役割もあります。
袋の中の空気を抜いてコンパクトにした方が冷蔵庫では邪魔にならなそうですが、あの膨らみ自体にも商品を守る意味があったのです。
ただし、包装そのものは時代に合わせて変化しています。
シャウエッセンといえば、かつては袋の上部をテープで留めた「巾着型」のパッケージがおなじみでした。
日本ハムは2022年2月から上部の巾着部分をなくした「エコ・ピロタイプ」に変更。公式発表によると、包装資材重量を従来比で28%削減しました。
見慣れたウインナーの包装も、環境負荷を減らす方向へ少しずつ変化しています。
2026年にはシャウエッセンが117gから107gへ
そんな「2袋セット」が改めて注目されたのが、2026年10月のシャウエッセンのリニューアルです。
日本ハムは主力のシャウエッセン2束について、117g×2パックから107g×2パックへ内容量を変更しました。
背景として挙げられているのは、原材料価格だけでなく、包装資材や物流、エネルギーコストなどの上昇です。参考小売価格702円は据え置かれました。
2袋合計では234gから214gとなり、20gの減量です。
一方で日本ハムは、単純にウインナーを小さくしたわけではありません。
今回のリニューアルでは1本あたりの重量を増やし、肉感をアップ。「ぱっつんぱっつん」という言葉で食べ応えを打ち出しています。
つまり、全体の内容量は減るものの、1本をより食べ応えのあるウインナーにする方向へ変更した形です。
そして興味深いのは、内容量を変更しても「2袋セット」という基本的な販売スタイルは残っていることです。
長く売り場で見慣れてきた2個束は、日本の家庭で使いやすい販売方法として定着していることがうかがえます。
大袋ではダメなの?実はシャウエッセンにも存在した
「それならジッパー付きの大袋にすればいいのでは」と思う人もいるでしょう。
実際、日本ハムは2020年12月に508gの「シャウエッセン ジッパー付」を発売しています。
こちらは好きな量を取り出して残りを保存できるようジッパーを採用。同重量を2個巻きパックにした場合と比較して、使用するフィルム量も削減できる商品として登場しました。
つまり、ウインナーは必ず2袋でなければならないわけではありません。
それでもスーパーの定番商品で2個束が長く残っている背景には、「一度に使いやすい量」「未開封のままストックできる」「2つ買ったようなお得感」という複数のメリットがうまく重なっているのでしょう。
何気なくハサミでテープを切っていたウインナーの2個束ですが、その形には品質を保つ工夫と販売上の理由がありました。シャウエッセンの内容量や包装が時代に合わせて変化する中、当たり前に見える「2袋セット」にも長い工夫の積み重ねがあるようです。
