紅茶キノコは今も人気?昭和のブームとコンブチャ・スコビーの現在

1970年代に日本で大流行した「紅茶キノコ」。最近では「コンブチャ」という名前で知られ、Instagramでは発酵に使うゼリー状の「スコビー」を切って焼く投稿も見かけます。

昔の紅茶キノコと今のコンブチャは同じものなのでしょうか。なぜ健康食品として流行し、スコビーはどう使われていたのでしょう。健康効果の研究や自家製での注意点も含めて、昭和と現在の楽しみ方を振り返ります。

目次

紅茶キノコとコンブチャは同じもの?スコビーとは

紅茶キノコとコンブチャは、基本的に同じ発酵飲料です。砂糖を加えた紅茶や緑茶に、細菌と酵母の共生培養物を加えて発酵させます。味は甘酸っぱく、発酵状態によっては微炭酸になることもあります。

名前の「キノコ」は、発酵中にできる膜状のかたまりがキノコのように見えることに由来するとされています。実際のキノコではありません。また、コンブチャは昆布茶とは別物で、海外で「Kombucha」という名称が定着した正確な経緯には諸説あります。

スコビーはゼリー状の膜のこと?

SCOBY(スコビー)は「細菌と酵母の共生培養物」を意味する言葉です。一般には、発酵液の表面にできるぷるぷるした膜もスコビーと呼ばれます。膜の主成分は微生物が作るセルロース。見た目は厚いナタデココのようですが、飲料を発酵させるための培養物として使われてきました。

昭和の紅茶キノコはなぜ流行った?昔の飲み方も

日本で紅茶キノコが注目されたのは1970年代半ば。健康によいと期待され、家庭で育てる健康法として広まりました。1975年には主婦の友社から『紅茶きのこ健康法 体験と理論』が出版されています。国立国会図書館のレファレンス資料でも、同年の新聞記事などが関連資料として挙げられています。

当時は便通や疲労回復、美容などへの効果が期待されていました。ただし、それらが医学的に十分証明されていたわけではありません。健康によさそうなものを暮らしに取り入れたいという関心は、今も昔も変わらないのかもしれません。

スコビーは食べずに育て、株を分けていた

昔の一般的な楽しみ方は、砂糖入りの紅茶に株と発酵液を加え、発酵した液体をコップに注いで飲むというもの。ゼリー状の株は次の発酵に再利用していました。

発酵を続けると新しい膜ができるため、増えた株を友人や知人に分けることもありました。今のSNSでレシピを共有する感覚とは違い、実際の株を人から人へ渡していたところが面白いですね。

なお、昔の日本でスコビーを料理して食べることが一般的だったという資料は確認できませんでした。中心だったのは、あくまで発酵液を飲む健康法です。

コンブチャは体によい?研究で分かっていること

コンブチャには茶葉由来のポリフェノールや、発酵で生じる酢酸などの有機酸が含まれます。こうした成分に関心が集まっていますが、成分が含まれることと、飲めば健康状態が改善することは別です。

2025年に学術誌『Fermentation』で公表されたシステマティックレビューでは、成人を対象とした8件の臨床試験が検討されました。研究期間は10日から10週間で、一部では便秘に関連する症状の軽減や腸内細菌の構成の変化が報告されています。

一方、血糖値に関する結果は一貫しておらず、ダイエットや美容に確かな効果があると判断するには研究が不足しています。現時点では、病気の予防や治療を目的に飲むものではなく、好みに合わせて楽しむ発酵飲料と考えるのが自然でしょう。

砂糖が残る製品もあり、発酵によってアルコールが生じる場合もあります。市販品を選ぶ際は原材料や表示を確認したいところです。

Instagramで見かけるスコビー料理は安全?

最近はInstagramで、自家製コンブチャのスコビーを切って焼いたり、肉料理風に味付けしたりする投稿も見かけます。独特の弾力を楽しみ、増えた発酵素材を活用するという発想は、昔の紅茶キノコとはまた違った楽しみ方です。

ただし、スコビーそのものを食べることで特別な健康効果が得られるという十分な証拠はありません。また、自家製の発酵食品には衛生管理上の注意が必要です。

自家製ではカビや酸性度に注意

米国疾病対策センター(CDC)は1995年、コンブチャを日常的に飲んでいた2人に重い健康被害が生じ、うち1人が亡くなった事例を報告しています。ただし、調査ではコンブチャとの因果関係は確定しておらず、死亡原因と断定することはできません。

同報告では、家庭ごとに製造条件が異なるため、カビなどの混入が起こり得ることも指摘されています。実際に調査した発酵液から既知の病原菌や毒素産生菌は検出されませんでしたが、これはすべての自家製品の安全を保証するものではありません。

発酵中には酸性度が高くなったり、アルコールが生成されたりすることもあります。容器の材質によっては酸で成分が溶け出す危険もあります。見た目だけで安全性を判断できず、加熱すればどんな状態のスコビーでも安全になるわけではありません。

発酵食品作りを楽しむ文化そのものを否定する必要はありませんが、衛生管理が難しい場合は無理に自家製を試さず、品質管理された市販の飲料を選ぶ方法もあります。

紅茶キノコは今また流行っているの?

コンブチャは現在、海外だけでなく日本でも発酵飲料として販売されています。一方、Instagramでスコビー料理を見かけるからといって、昭和と同じ規模で紅茶キノコが再ブームになっているとは限りません。自家培養やスコビー料理の広がりを示す信頼できる全国的なデータは確認できませんでした。

それでも、昔は飲むために育てていた株を、今は料理に使う人もいるという変化は興味深いものです。発酵食品が好きな人にとっては、育てる過程も楽しみの一つなのでしょう。

約50年前には近所の人から株を分けてもらい、今はSNSで育て方やアレンジを紹介する。健康効果について分からないことは残っていますが、時代が変わっても健康食品や発酵食品に魅力を感じる人はいるものですね。昭和の紅茶キノコを知る人には、少し懐かしくも新鮮な光景かもしれません。

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