家族の日常を発信する「家族系YouTuber」。子どもの成長を見守れる一方で、「本人は本当に出演したいの?」「収益は誰のもの?」という疑問もあります。
2026年10月、登録者約62万人の「しょうやん男三兄弟」が収益化の再審査に通らなかったと報告しました。過去動画約2200本を削除しても認められず、3カ月後に再挑戦するといいます。
ただし、収益化停止は子どもへの虐待が認定されたという意味ではありません。今回の経緯とYouTubeのルール、そして親が子どもを動画に出演させる際の難しさを整理します。
しょうやん男三兄弟はなぜ収益化停止に?
「しょうやん男三兄弟」は父親のしょうやんさん、母親、3人の息子による家族系チャンネル。2020年のTikTok投稿をきっかけに注目され、2021年5月にYouTubeチャンネルを開設しました。
2026年9月12日には収益化停止などを理由にYouTubeからの引退を発表。その後、復活を目指して過去動画約2200本を削除し、問題がないと考えた10本を再公開しました。
ところが10月24日の動画で、収益化の再審査が認められなかったことを報告。しょうやんさんによると、示された理由は「未成年者の意に反して注目を浴びることを促すコンテンツ」でした。
この表現だけでは、どの場面が問題とされたのかは分かりません。本人は、けんかや涙の場面が誤解される可能性にも言及していますが、YouTube側の個別の判断過程が公開されたわけではありません。
今後は大人も一緒に出演する動画を週1本投稿し、3カ月後に最後の挑戦をする方針です。一方、過去動画はDMMオンラインサロン内の別チャンネルで公開する計画も明かしました。
ここで気になるのは、動画を削除しても収益化が戻らなかったこと。YouTubeでは、子どもや家族向けのコンテンツについて品質や安全性に関する基準を設けています。収益化が停止されても動画投稿そのものが必ず禁止されるわけではなく、再審査や一定期間後の再申請の仕組みがあります。
家族系YouTuberの何が問題?親子だからこその難しさ
「撮影が楽しい」と「公開していい」は別
小さな子どもがカメラに向かって笑う姿は微笑ましいものです。でも、撮影を楽しんでいることと、何十万人もの知らない人に見られ続けることを理解しているかは別の話でしょう。
幼いころは気にならなかった動画も、中学生や高校生になれば恥ずかしく感じるかもしれません。泣き顔や失敗、兄弟げんかが検索すれば見つかる状態を、本人が望むとは限らないのです。
再生回数が家庭生活を変えてしまう可能性
家族系チャンネルでは、旅行や誕生日のような楽しい場面だけでなく、叱られる姿やけんかも注目を集めることがあります。
飾らない日常だからこそ人気になるのでしょう。ただ、カメラが回っていなければ公開されなかったはずの瞬間まで、動画にする必要があるのか。親が公開したいと思っても、子どもには断る権利があるはずです。
さらに、広告収益や企業案件が家計を支えるようになれば話は複雑です。子どもが「今日は出たくない」と言ったとき、親は迷わず撮影をやめられるでしょうか。
もちろん、すべての家族系YouTuberが出演を強制しているわけではありません。問題は、家族の思い出と仕事の境界が見えにくくなることです。
子どもの居場所まで知られる危険も
制服、通学路、近所の公園、家の窓から見える景色。何気ない映像が積み重なることで、生活圏を推測されるおそれもあります。
視聴者が増えるほど、応援してくれる人だけが動画を見るわけではありません。子どもの安全を考えれば、公開しない情報を決めておくことも大切です。
子どもが稼いだYouTube収益は誰のもの?海外では法律も
家族の動画で収入が生まれたとき、そのお金をどう分けるのかも大きな問題です。親が撮影・編集・交渉を担っていても、人気の中心が子どもというケースはあります。
日本では、子どもがYouTubeに出演すること自体を一律に禁じる法律はありません。活動の実態によって労働関係法令などの適用が問題になる場合はありますが、家族系動画の収益から一定割合を子ども名義の口座に積み立てるよう一律に義務づける全国共通の特別制度はありません。
海外では、もう一歩踏み込んだ動きが出ています。
アメリカ・イリノイ州は子どもの取り分を保護
アメリカのイリノイ州では2024年、一定の条件を満たす収益化された家族の動画に登場する子どもについて、収益の一部を信託口座で保護する制度が始まりました。
家族の動画に出る子どもも、収益を生み出す活動の当事者だという考え方です。すべての出演に自動的に報酬が発生する制度ではありませんが、子どもの権利を法律で守ろうとする点が特徴です。
フランスでは出演と肖像権を法律で保護
フランスでも2020年、16歳未満の子どもが動画配信で活動する際の保護に関する法律が成立しました。2024年には子どもの肖像権を守るための法律も成立しています。
親が投稿する写真や動画であっても、子どものプライバシーは尊重されるべきだという考え方が背景にあります。
日本でも家族系動画が広く親しまれる今、出演の意思や収益の管理、削除を求める権利について、家庭内の判断だけに任せてよいのか考える時期に来ているのかもしれません。
家族系YouTuberはなくなるべき?大切なのは子どもの意思
家族系YouTuberには、子育ての悩みを共有できたり、成長を一緒に喜べたりする魅力があります。だからこそ、すべてを否定するのは違うでしょう。
ただ、親が「残しておきたい」と思う記録と、子どもが「見せたくない」と思う記録は、必ずしも一致しません。
撮影を嫌がったらやめる。泣いている姿や恥ずかしい場面は公開しない。学校や生活圏を特定される情報を避ける。収益が生まれたら子どもの将来のためにどう残すか考える。そして成長して削除を求められたら、真剣に向き合う。
こうした配慮は、チャンネルの規模にかかわらず大切なはずです。
「しょうやん男三兄弟」の収益化停止については、個別の審査内容がすべて明らかになったわけではありません。一方で、今回の出来事が家族系YouTuber全体のあり方を考えるきっかけになったのも確かです。
親にとっては家族の記録でも、子どもにとっては自分自身の人生。再生回数よりも、将来その動画を見た子どもがどう感じるかを大切にしてほしいですね。
