日本レコード大賞といえば、その年を代表するヒット曲に贈られる音楽賞。ところが歴代の受賞曲を振り返ると、「これもレコ大だったの?」と驚く作品が見つかります。
アニメのエンディング曲が頂点に立った年もあれば、アルバム収録曲から人気に火がついた曲、受賞発表の瞬間に歌手が会場にいなかった年も。今回は受賞曲そのものだけでなく、選ばれるまでの経緯が面白い10曲を取り上げます。
歴代レコード大賞の意外な受賞曲10選
1959年・水原弘「黒い花びら」|初代王者はデビュー年
第1回の大賞に選ばれたのは、水原弘の「黒い花びら」。水原は1959年にレコードデビューしたばかりでした。すでにスターだったベテランではなく、新しい才能が初代王者になったのです。
日本作曲家協会の記録によると、第1回の開催日は12月27日。長い歴史を持つレコ大も、最初から現在のような年末の恒例行事だったわけではありません。
1983年・細川たかし「矢切の渡し」|有名曲はカバーだった
「矢切の渡し」といえば細川たかしを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、もともとは1976年にちあきなおみが発表した曲。細川版が広く知られるようになり、1983年の大賞を受賞しました。
細川は前年の「北酒場」に続いて2年連続の大賞。日本作曲家協会によれば、これは当時のレコ大史上初の連覇でした。カバー曲が歌手の代表曲となり、記録まで生んだ例です。
1987年・近藤真彦「愚か者」|萩原健一も歌っていた
近藤真彦が大賞を受賞した「愚か者」は、萩原健一が「愚か者よ」として歌ったことでも知られます。同じ楽曲を異なる歌手が表現する競作という背景がありました。
きらびやかなアイドルのイメージから一転、渋みのある歌を聴かせた近藤。受賞曲を聴き比べると、歌い手によって曲の印象が変わる面白さも感じられます。
1988年・光GENJI「パラダイス銀河」|ローラースケートの社会現象
光GENJIの「パラダイス銀河」は、ローラースケートで駆け回りながら歌うパフォーマンスとともに大ヒット。作詞・作曲は飛鳥涼(ASKA)が手がけました。
レコード大賞の舞台に、当時のアイドルブームがそのまま飛び込んできたような受賞です。曲だけでなく、テレビで見る姿まで強烈に記憶されている人も多いはずです。
1990年・B.B.クィーンズ「おどるポンポコリン」|アニメ主題歌が頂点
『ちびまる子ちゃん』の初代エンディングテーマ「おどるポンポコリン」。さくらももこが作詞、織田哲郎が作曲したこの曲は、アニメの枠を超えて子どもから大人まで親しまれました。
実は1990年のレコ大は「歌謡曲・演歌」と「ポップス・ロック」の部門別に大賞を選出。B.B.クィーンズが受賞したのはポップス・ロック部門で、もう一方の大賞は堀内孝雄「恋唄綴り」でした。「その年の大賞が2曲あった」という制度自体も、今から見ると意外です。
1991年・KAN「愛は勝つ」|アルバムから大ヒットへ
誰もが口ずさめるサビを持つKANの「愛は勝つ」は、最初からシングルとして登場した曲ではありません。1990年発売のアルバム『野球選手が夢だった。』に収録された後、シングルカットされました。
人気が広がり、翌1991年にはポップス・ロック部門の大賞に。同年の歌謡曲・演歌部門は北島三郎「北の大地」でした。なお「愛は勝つ」は受賞前にシングル化されているため、未シングル化のアルバム曲が受賞した例とは異なります。
1994年・Mr.Children「innocent world」|受賞したのに本人不在
1994年の大賞はMr.Childrenの「innocent world」。ミスチルを一躍国民的バンドへ押し上げた代表曲の一つです。
ところがメンバーは授賞式に出席せず、本人不在の受賞となりました。受賞曲が大ヒットしている一方で、ステージに当のアーティストがいない。曲の人気とは別の意味で記憶に残る出来事です。
2019年・Foorin「パプリカ」|大賞発表時には帰宅
米津玄師が作詞・作曲・プロデュースした「パプリカ」を歌ったのは、子どもたちによるグループFoorin。大賞受賞時の平均年齢は11.2歳で、史上最年少受賞となりました。
さらに異例だったのは発表の瞬間です。午後9時以降の出演を自主規制したため、メンバーはすでに帰宅。受賞は電話で伝えられ、制作スタッフが代理で賞を受け取りました。これは主催者の公式記録にも残されています。
2021年・Da-iCE「CITRUS」|積み重ねた実力が大賞に
2021年の大賞はDa-iCEの「CITRUS」。ドラマ『極主夫道』の主題歌で、グループにとって初めての大賞でした。
受賞をきっかけにDa-iCEの名前を強く意識した人もいたでしょう。世間での知名度と、積み上げてきた歌唱・パフォーマンスの実力が必ずしも同じタイミングで広がるわけではないことを感じさせます。
2022年・SEKAI NO OWARI「Habit」|ダンス動画から広がった話題
2022年はSEKAI NO OWARIの「Habit」。映画『ホリック xxxHOLiC』の主題歌として発表され、独特の振り付けを取り入れたミュージックビデオも話題になりました。
耳に残るメロディーと、どこか皮肉の効いた歌詞。そして真似したくなるダンス。音楽の広がり方がテレビやCDだけではなくなった時代を象徴する一曲です。
レコード大賞はシングル以外でも受賞できる?
今回の10曲の中で、発売形態が特に興味深いのはKANの「愛は勝つ」です。アルバム収録曲からシングルカットされ、その後に大賞を受賞しました。
ただし「CDシングルを発売していない曲」と「シングルとして一度も発表されていないアルバム曲」は別物です。配信シングルもある現在、CDの有無だけで判断することはできません。未シングル化のアルバム収録曲がそのまま大賞を受賞した確実な前例については、今回の調査では確認できませんでした。
まとめ|大賞曲の背景を知るとレコ大がもっと面白い
アニメ主題歌の「おどるポンポコリン」、アルバムから育った「愛は勝つ」、発表時に子どもたちが帰宅していた「パプリカ」。歴代のレコード大賞には、曲名だけでは分からないドラマが詰まっています。
近年はMrs. GREEN APPLEが2023年「ケセラセラ」、2024年「ライラック」、2025年「ダーリン」で3年連続受賞。2026年の大賞がどうなるのかも気になるところです。
今年の候補を考えたい人は、2026年日本レコード大賞の予想記事もあわせてどうぞ。過去の受賞結果を知ると、年末の発表をまた違った目で楽しめそうです。