街を歩いていると、スパイシーな香りとともに目に入る、大きな肉の塊。ぐるぐる回る肉を薄く削り、パンに挟んでくれるケバブ屋さんです。
今ではすっかりおなじみですが、いつから日本で広まり、なぜ街角に増えたのでしょうか。
実は、ドネルケバブは1990年代には日本の移動販売にも登場していました。食べ歩きにぴったりなうえ、メニューを絞った小規模営業とも相性がいい料理です。ただし、始めやすさと儲けやすさは別の話。日本での歴史とケバブ屋の商売の仕組みを見ていきます。
ケバブはいつから日本で流行った?
街角で見かける、縦型のグリルで肉を回しながら焼く料理は「ドネルケバブ」と呼ばれます。焼けた表面を削ってパンに挟むケバブサンドが、日本では特におなじみです。
日本ケータリングカー協会によると、1991〜2002年にはケバブを含む多様な移動販売がイベント会場などに登場し、徐々に浸透していきました。
その歴史を知るうえで外せないのが、秋葉原の「スターケバブ」です。公式サイトによれば、1999年6月に移動販売からスタート。秋葉原で長く親しまれる存在になりました。
もちろん、スターケバブが日本で最初のケバブ屋だったという意味ではありません。日本での普及をたどる手がかりが豊富に残る老舗の一つです。
ケバブ屋が日本で増えたのはなぜ?
肉がぐるぐる回るだけで目立つ
ケバブ屋の一番の特徴は、やはりあの調理風景。肉の塊が回り、店員さんが表面を削っていく様子は、初めて見た人ならつい足を止めたくなります。
香ばしい匂いも加わって、調理しているところがそのままお店の宣伝になるのです。
食べ歩きにちょうどいい
肉と野菜をパンに挟んだケバブサンドは、片手で食べやすく、買い物やイベントの途中にもぴったりです。
クレープやホットドッグと同じように、わざわざ席に座らなくても食事ができる。この手軽さが繁華街やイベント会場と相性のよい理由でしょう。
味を選べて、食事としても満足感がある
肉だけでなくキャベツなどの野菜も入り、ソースは甘口から辛口まで選べる店もあります。
見た目はちょっと珍しくても、パンと肉と野菜の組み合わせなら親しみやすいですよね。小腹を満たす軽食にも、しっかりした食事にもなります。
移動販売から始められる
もう一つの理由として考えられるのが、小規模な出店との相性です。
実際、スターケバブも最初は移動販売車からのスタートでした。客席のある大きなレストランを構えなくても販売できることは、新しく商売を始める人にとって魅力だったはずです。
ただし、これだけで全国のケバブ店が増えた原因を説明できるわけではありません。店舗数の長期推移を示す統計も乏しく、ここでは商品と営業形態の特徴から考えています。
ケバブ屋は開業しやすい?
一般的なレストランと比べると、ケバブ屋はメニューを絞りやすい業態です。
例えば、ケバブサンド、ラップ、ケバブ丼なら、中心になる肉を共通で使えます。パンやご飯、野菜、ソースを組み合わせれば、少ない種類の食材でも複数の商品を提供できます。
専用グリルを中心に作業を組み立てられるため、テイクアウト専門店やキッチンカーとも相性がよく、規模によっては少人数での営業も可能です。
とはいえ、グリル一台だけで営業できるわけではありません。冷蔵・手洗い・給排水・換気などの設備、営業許可、衛生管理が必要です。大きな肉の塊を扱うため、適切な加熱や温度管理も欠かせません。
ケバブ屋の開業資金はいくらかかる?
開業費用は、キッチンカーなのか固定店舗なのかで大きく違います。
キッチンカーなら車両購入・改装、回転式グリル、冷蔵設備、給排水設備など。固定店舗なら、さらに物件取得費や内装工事費、家賃がかかります。
中古設備や居抜き物件を活用すれば費用を抑えられることもありますが、専用グリルの熱源や換気条件には注意が必要です。
また、キッチンカーは営業許可を取ればどこでも販売できるわけではありません。出店場所の確保や、その場所ごとのルールへの対応も必要になります。
ケバブ屋は儲かる?売上を計算してみた
気になるのは、実際にどのくらい売上が出るのかというところです。
仮にケバブサンドを1個700円で販売し、月25日営業すると、次のようになります。
| 1日の販売数 | 1日の売上 | 月商 |
|---|---|---|
| 30個 | 21,000円 | 52万5,000円 |
| 50個 | 35,000円 | 87万5,000円 |
| 100個 | 70,000円 | 175万円 |
これは販売価格と個数を仮定した計算で、実際の店舗の売上ではありません。
ここから肉や野菜、パン、容器、光熱費、出店料、家賃、人件費などを引いたものが利益になります。
特にケバブは肉の仕入れと販売量のバランスが重要。たくさん仕込んでも売れなければ負担になりますし、人通りの多い場所でも出店料が高ければ利益が残りにくくなります。
メニューが少ないから簡単に儲かる、というわけではないのですね。
老舗スターケバブにも閉店と復活の歴史があった
日本でのケバブ普及を象徴するスターケバブにも、経営の難しさがうかがえる出来事がありました。
2023年2月20日、秋葉原の本店とアキバテラスがいったん閉店。報道によると、コロナ禍での経営不振や経営者の体調不良が理由でした。
ところが、閉店を惜しむ声を受け、同年3月31日には本店が営業を再開します。
その後、2026年6月には本店が再び閉店。スターケバブの公式サイトでは、現在もアキバテラス店の営業が案内されています。
小さく始められる商売でも、長く続けるのは簡単ではありません。それでも多くの人に惜しまれ、復活まで果たしたというのは、ケバブが日本の街に根付いたことを感じさせるエピソードです。
ケバブが日本に定着した理由を振り返ると
ケバブが日本で親しまれるようになった背景には、肉が回るインパクト、食べ歩きのしやすさ、満足感のある味、そして小規模な移動販売との相性がありそうです。
1990年代には移動販売で見られるようになり、秋葉原などでは老舗店が街の名物に成長しました。
次にケバブ屋さんの前を通ったら、ぐるぐる回る肉だけでなく、その裏にある商売の工夫にも目が向きそうですね。
