ZARDの「揺れる想い」は、誰を思って書かれた曲なのでしょうか。2026年9月24日放送のNHK「名曲考察教室」では、恋愛だけにとどまらない、母と娘やスポーツのペアという意外な解釈が紹介されました。
ただし、出演者の考察と、坂井泉水さん自身の体験は別のものです。今回確認した資料では、実在のモデルを特定できる情報は見つかっていません。放送内容を踏まえ、歌詞の意味と作品に表れた恋愛の世界を整理します。
ZARD「揺れる想い」は誰のことを歌っている?
「揺れる想い」が特定の恋人に向けて書かれたと断定できる本人の発言や公式説明は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。
歌詞が具体的な心の動きを描いていると、実体験なのではと感じることもあります。しかし、作品の主人公と作詞家本人は必ずしも同じではありません。「歌の中の相手」と「現実のモデル」は、分けて考える必要があります。
1993年発売の、夏を感じさせる代表曲
「揺れる想い」は、1993年5月19日発売のZARDの8枚目のシングル。作詞は坂井泉水さん、作曲は織田哲郎さん、編曲は明石昌夫さんが担当しました。ポカリスエットのCMソングとしても知られています。
透明感のある歌声と爽やかなメロディーから、青春の恋を思い浮かべる人も多いでしょう。恋愛の歌として受け取れば、主人公が心を開き、一緒に未来を歩みたいと願う大切な相手への歌と読めます。
「君」と「あなた」は違う相手?
歌詞には「君」と「あなた」という呼び方が登場します。ただ、呼び方が変わることだけで、二人の相手がいるとは判断できません。
同じ人への呼びかけでも、場面や気持ちによって距離感は変わります。歌では言葉の響きとメロディーの関係もあるため、呼称の違いにはいくつもの読み方ができます。
三角関係を想像する余地はあっても、それが制作背景として確認されているわけではありません。誰かの実名に結びつけるより、主人公が相手をどう感じているかに注目すると、作品を味わいやすくなります。
9月24日「名曲考察教室」で紹介された解釈
NHK総合「名曲考察教室」のZARD特集は、2026年9月24日20時15分~20時42分に放送されました。番組は歌詞から自由に物語を考え、その解釈を新たなミュージックビデオとして表現する企画です。
放送記録では、大友花恋さんと中野なかるてぃんさんによる、次の二つの物語が紹介されています。
大友花恋は「母と娘」の物語として考察
大友花恋さんは、タイトルの「揺れる」から揺りかごを連想し、母と娘の関係を読み取りました。番組では、その考察をもとにしたMV「愛を放つ」が流れています。
収録を取材した神戸新聞の記事でも、大友さんは母娘の愛憎を軸に物語を想像したと紹介されています。単に仲のよい親子というだけでなく、近い関係だからこその複雑な気持ちに目を向けた解釈です。
ここからは本稿の考察ですが、恋人同士だと思っていた歌を親子の関係に置き換えると、そばにいたい気持ちの受け取り方も変わります。相手を思う愛情は、男女の恋だけに限らない。その視点が、この解釈のおもしろさでしょう。
中野なかるてぃんは「混合ダブルス」の物語に
ZARDファンの中野なかるてぃんさんは、それぞれ事情を抱えた男女のバドミントン選手が、混合ダブルスを組むまでの物語を考察しました。番組で披露されたMVのタイトルは「夏に出会った夢」です。
神戸新聞の収録記事では、中野さんが二人の夢が重なっていくところを大切にしていたことも伝えられています。
この読み方を踏まえると、大切な相手とは、恋人だけでなく同じ目標へ向かうパートナーでもあり得ます。一人では描けなかった未来が、誰かとの出会いで見えてくる。そんな物語として聴き直す楽しさがあります。
中島健人もZARDの魅力を語った
中島健人さんのインタビューも放送されました。放送記録によると、ZARDとの出会いは9歳の頃で、歌詞の儚さや坂井さんの表現の魅力について語っています。
これはファンとして作品への思いを語ったもので、坂井さんの実際の恋愛相手を証言したものではありません。
「不倫の歌だった」と判明したわけではない
放送前の収録取材では、大久保佳代子さんが、複雑な恋ゆえの心の揺れではないかという説を出したことも報じられていました。ただし、この説も出演者による解釈です。
母娘説も、混合ダブルス説も、作詞の実話が明かされたという意味ではありません。番組で紹介された物語を、坂井さん本人の私生活や公式の制作意図として伝えないことが大切です。
歌詞の意味と坂井泉水の恋愛観をどう考える?
ここからは、放送で紹介された解釈とは分けて、本稿として歌詞の意味を考えます。私は「揺れる想い」を、誰かを好きになる喜びと、相手を信じるまでのためらいが同居する歌として受け取っています。
好きな相手が決まっていても、心は揺れる
「揺れる」と聞くと、誰を選ぶか迷う状態を想像しがちです。でも、大切な人が決まっていても、不安や緊張はなくなりません。
近づきたいけれど、自分をどう思われるか気になる。うれしいのに、少し怖い。そんな気持ちも、恋をしたときの自然な揺れではないでしょうか。
この読み方なら、曲の爽やかさと繊細さがつながります。明るい恋愛ソングの中にも、簡単には割り切れない心の動きがあるから、自分の経験を重ねやすいのだと思います。
周囲の証言から分かる、言葉を大切にした姿
ニッポン放送が紹介したZARD35周年の特別番組では、現場マネージャーを務めた野口麻由さんが、坂井さんの優しさや周囲への気遣いを振り返っています。自分の言葉の影響を意識し、伝え方を考えていたという証言もありました。
また、SARD UNDERGROUNDの神野友亜さんは、坂井さんの歌詞には相手を大切にする魅力があり、歌う側も大切にされているように感じると語っています。
これらは恋愛事情の証言ではありませんが、坂井さんが言葉にどう向き合っていたか、作品がどう受け取られているかを知る手がかりになります。
本人の恋愛観と、作品に描かれた愛情は分けたい
繊細な歌詞から「坂井さんも一途な恋をする人だったのでは」と想像することはできます。ただ、作品だけで本人の交際経験や恋愛観まで断定することはできません。
今回の番組で示されたのは、一つの曲が親子の愛情にも、夢を共有する仲間の物語にもつながるという、解釈の広がりです。
「揺れる想い」は誰のことなのか。実在のモデルは今回確認できませんでしたが、歌の中の大切な相手には、聴き手それぞれが違う顔を重ねられます。坂井さんの私生活の答えを探すことと、歌から自分なりの物語を受け取ることを分ければ、さらに豊かに楽しめる一曲です。
