テレビ番組で生成AIを使った映像が増え始めています。2026年10月には、フジテレビ系『世界の何だコレ!?ミステリー』の再現ドラマの一部にAI映像が使われたと報じられました。背景やイラストをAIで作れば、撮影や制作の負担を減らせる可能性があります。一方、再現ドラマに出演してきた俳優やエキストラの仕事はどうなるのでしょうか。実際の番組例と、AIが得意な仕事・人間に残る仕事を整理します。
生成AIを使ったテレビ番組の実例は?
『世界の何だコレ!?ミステリー』ロッキード事件特集
フジテレビ公式サイトによると、2026年10月14日の『世界の何だコレ!?ミステリー』では、田中角栄元首相の逮捕につながったロッキード事件を特集。元秘書、当時の番記者、事件を取材した小説家への取材を放送しました。
10月17日公開の田辺ユウキ氏によるYahoo!ニュース エキスパートの記事では、この特集の再現ドラマの一部に生成AI映像が使用されたと紹介されています。ただし、フジテレビ公式の番組紹介では、どの場面にAIを使用したか、映像全体の何割をAIで制作したかまでは確認できません。
番組公式の放送内容はこちらで確認できます。
『TOKYO巫女忍者』の背景映像
2026年10月14日のNHKの報道では、日本テレビの『TOKYO巫女忍者』について、背景映像を生成AIで制作した例が取り上げられています。背景をAIで作る手法は、出演者自身の演技をAIで置き換えることとは異なります。
ロケ地や大規模なセットを用意しなくても、演出に合わせた空間を表現できることが利点です。ただし、どの工程をAIが担当し、どの工程をスタッフが制作したかは作品ごとに異なります。
再現イラストなどにも広がる活用
バラエティー番組では、出演者の体験談を説明するためにイラストや再現映像が使われます。こうした画像も生成AIで制作できる分野です。従来のイラスト制作やCG制作がすべて不要になるわけではなく、表現の調整や事実確認には人の判断が欠かせません。
テレビ局が生成AIを使う理由は?制作費は安くなる?
生成AI導入のメリットとして挙げられるのは、制作費の削減、制作時間の短縮、撮影が難しい映像の表現です。
通常の再現ドラマでは、俳優やエキストラの手配、撮影場所の確保、衣装・美術の準備、カメラや照明など多くの工程が必要になります。AI映像なら、場面によっては実際の撮影を省けます。
2026年10月12日のFNNプライムオンラインの記事では、実写で約1400万円かかっていた作品をAIなら約70万〜100万円で制作できるという比較が紹介されています。ただし、これは報道で紹介された特定の制作例に関する数字です。一般的なテレビ番組の制作費が必ず14分の1〜20分の1になるという意味ではありません。
AIでも、企画、演出、画像の修正、編集、音声制作、権利確認などに費用がかかります。思いどおりの映像を得るために何度も作り直すこともあるため、実際の削減効果は制作内容によって変わります。
再現ドラマの俳優やエキストラの仕事はなくなる?
生成AIによって一部の出演機会が置き換わる可能性はありますが、俳優の仕事がすべてなくなると決まったわけではありません。
事件や歴史上の出来事を再現する番組では、短い出演シーンでも俳優やエキストラが役割を担ってきました。AIで人物を描く場面が増えれば、こうした出演機会が減ることは考えられます。
ただし、2026年10月時点で、生成AIの導入により日本の再現ドラマ俳優の仕事がどれだけ減少したかを示す十分な統計は確認できません。将来の可能性と、すでに起きた事実は区別する必要があります。
俳優にしかできない仕事もある
俳優の仕事は、人物の姿を映像にするだけではありません。共演者との掛け合い、表情や声の変化、監督とのやり取りを通じて演技を作り上げます。視聴者が特定の俳優の出演を楽しみにすることも、作品の大きな魅力です。
背景や群衆はAIで作り、中心となる人物は俳優が演じるといった制作方法も考えられます。AIを使うことが、必ずしも出演者の全面的な代替につながるわけではありません。
美術・撮影・イラスト・声の仕事にも影響
変化する可能性があるのは、俳優だけではありません。セット制作、背景美術、イラスト、撮影、CG、ナレーションなどもAIの活用対象になり得ます。一方で、生成映像の演出や品質管理、権利処理など、新たな役割が重要になる可能性もあります。
AI再現映像は見分けられる?著作権や正確性の問題
過去の事件を映像化する際に注意したいのは、視聴者が再現映像を実際の記録映像と誤解することです。AIで作った人物の表情や行動が、本人の実際の言動と一致するとは限りません。
特に実在人物の顔や声を再現する場合には、事実関係だけでなく、肖像や声の利用に関する権利・契約・人格的利益などの検討も必要になります。
生成AIで制作したからといって著作権の問題が自動的になくなるわけでもありません。既存作品との類似性や、制作における人間の創作的関与など、個別の事情によって判断が変わります。
視聴者に対して、AIを使った再現であることを分かりやすく示す工夫も、信頼できる番組作りには重要でしょう。
テレビ番組は今後すべてAIになるのか
生成AIは、撮影が難しい場面や短い説明映像を作る際に便利な技術です。しかし、生放送での予想外の出来事、出演者同士の自然な会話、現場取材など、実際の人間が関わること自体に価値がある番組もあります。
今後は、AIか人間かという二者択一ではなく、必要な部分で技術を使い分ける制作が増えるかもしれません。
テレビの表現が豊かになるのは楽しみですが、これまで番組を支えてきた俳優やスタッフの仕事も大切です。AIで作れる映像が増えるからこそ、人が演じ、人が伝えることの価値も改めて考えたいですね。
