『ハモネプ』を見ていて、霜降り明星・粗品さんのコメントに思わず聞き入ってしまった人もいるのではないでしょうか。
「うまい」「感動した」で終わらない。コード進行、ベースの動き、声の重ね方、ほんの一瞬の間まで聴き取り、何が優れていたのかを言葉にする。その分析の細かさには驚かされます。
なぜ粗品さんはこれほど音楽に詳しく、コメントまで的確なのでしょうか。音楽家としての経歴と、2024年・2026年の『ハモネプ』での講評から考えてみました。
粗品はなぜ音楽に詳しい?ピアノから作曲まで続く音楽歴
粗品さんの音楽経験は、芸人になってから始まったものではありません。
幼い頃からピアノに親しみ、中学時代にはギター、高校時代にはパソコンでの音楽制作にも取り組んできました。音楽を聴くだけでなく、自分で音を組み立てる側の経験が長いのです。
インタビューでは、学生時代にクラシック音楽に興味を持ち、仲間を集めてオーケストラを作った経験も語っています。
複数のパートがどのように重なり、全体として一つの音楽になるのか。そうした視点は、声だけで演奏するアカペラの審査にも通じるものがあります。
さらに粗品さんは、自ら作詞・作曲や編曲を手がけ、アーティストとして作品を発表。2023年にはアニメ『青のオーケストラ』のエンディングテーマ「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」も担当しました。
単に音楽理論を知っているだけではなく、作り手として試行錯誤してきた人。そこが『ハモネプ』での講評の説得力につながっているように思います。
粗品のハモネプ審査コメントがすごい!印象的な講評
実際にどんなところを聴いているのか、放送時の講評を振り返ります。以下は発言の全文転載ではなく、要点を整理したものです。
2024年『宿命』――半音の動きまで聴き取る
Official髭男dismの『宿命』では、コーラスが不安定な響きから美しく解決する音の動きに注目しました。
半音の移動が生む効果や、その切り替えを正確に歌う難しさまで説明。何となく「きれいなハモり」と感じる部分を、音楽の仕組みから解き明かしていたのです。
2024年『虹』――音がない時間も評価する
菅田将暉の『虹』では、ベースの安定感に加え、終盤のコーラス前に設けられたブレイクを高く評価しました。
少し長ければ間延びし、短ければ余韻が足りない。そんな絶妙な「間」の取り方を聴いていたのが印象的です。
音を出す技術だけでなく、音を止める演出まで見ている。作曲や編曲を経験している人ならではの着眼点でしょう。
2024年『Tokimeki』――原曲の良さと編曲の良さを区別
Vaundyの『Tokimeki』では、複雑な音の重なりを美しいアカペラに仕上げた点を評価。その一方で、もともとの楽曲の魅力をどこまで採点に含めるかという難しさにも触れていました。
これは審査員として非常に興味深い視点です。名曲を選んだから素晴らしく聴こえたのか、それとも歌い手が新しい魅力を生み出したのか。粗品さんはそこを切り分けようとしているのです。
2026年『銀河鉄道999』――コード進行と発声を分析
岐阜高校が披露したゴダイゴの『銀河鉄道999』では、コード進行に応じた音の幅や、コーラスの発声に注目しました。
複雑な音の動きを安定して歌い切ったことを、音楽理論を交えながら評価。開幕にふさわしい演奏として称賛しています。
2026年『ココロオドル』――ミスの後まできちんと聴く
クラーク記念国際高校によるnobodyknows+の『ココロオドル』では、原曲の音の再現性を褒めつつ、歌詞を飛ばした場面にも言及しました。
しかし、そこで終わりません。その後の歌唱で魅力的だった部分も拾い上げています。
ミスを見逃さず、それだけで全体を否定しない。出演者にとっても、どこが良くてどこが課題なのかが伝わる講評だったのではないでしょうか。
2026年『私は最強』――大胆なアレンジを評価
開星高校が披露したAdoの『私は最強』では、冒頭の展開やリズムの変化、終盤の転調を使った盛り上げ方に注目。
原曲の魅力を理解したうえで、高校生たちがどんな工夫を加えたかを聴き取っていました。
また2026年大会後のフジテレビ公式インタビューでは、粗品さんは千種高校の演奏が特に印象に残ったと話しています。千種高校が歌ったのは、アンジェラ・アキの『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』でした。
なぜコメント力まで高い?音楽家の耳と芸人の言葉
粗品さんの講評を聞いて感じるのは、音楽の知識が豊富なことと、それをわかりやすく話せることは別の才能だということです。
音楽に詳しくても、専門用語を並べるだけでは視聴者に伝わりません。反対に、言葉がうまくても、演奏の細かな技術を理解していなければ具体的な講評にはならないでしょう。
粗品さんはその両方を持っているように見えます。
たとえば、声の重なりやコードの動きを説明するときには専門的な話をしながら、途中で擬音を交えてイメージしやすくする。これは長年、人前で言葉を届けてきた芸人としての経験も生きているのではないでしょうか。
そして何より、褒め方に根拠があります。「すごかった」の一言ではなく、「ここが難しいのに、こう歌えていたからすごい」と伝える。演奏した高校生にとっても、うれしい評価だと思います。
2026年大会の公式コメントでも、粗品さんは高校生たちが本気で挑んでいるからこそ、審査員も本気で応えたいという思いを語っていました。
普段の鋭いツッコミや毒舌を知っていると、その丁寧な姿勢が余計に印象に残ります。
もちろん、講評の優劣は聴く人によって感じ方が異なります。それでも、粗品さんの言葉を聞いたあとに演奏をもう一度聴くと、今まで気づかなかったベースやコーラスの動きに耳が向く。そこに審査コメントの面白さがあるのでしょう。
粗品さん自身が『ハモネプハイスクール』について語った動画も公開されています。
音楽家としての耳と、芸人としての言葉。その二つが重なるからこそ、粗品さんの『ハモネプ』審査は、演奏そのものと同じくらい聞き応えがあるのかもしれません。
