タピオカブームが去ったのに、なぜゴンチャ(Gong cha)は今も店舗を増やしているのでしょうか。かつてタピオカドリンクは一大ブームとなりましたが、その後は流行の沈静化やコロナ禍で厳しい環境になりました。それでもゴンチャは2026年8月時点で国内245店舗を展開。2019年から2024年にかけて年間来店客数も約1.7倍になっています。成長の背景には、タピオカだけに頼らない商品づくりと、角田淳社長が進めた店舗改革がありました。
ゴンチャはなぜタピオカブーム後も人気なのか?
大きな理由は、タピオカを一時的な流行の商品として終わらせず、「お茶を楽しむティーカフェ」として日常の利用につなげたことにあると考えられます。
ゴンチャは2006年に台湾で誕生し、2015年に日本へ進出。2018年前後のタピオカブームで人気を集めました。しかし、ブームが落ち着いても、ゴンチャではタピオカを入れないストレートティーやミルクティー、フルーツティーなどを選べます。
茶葉の味を楽しむ人にも、甘いドリンクが好きな人にも、季節の限定商品を試したい人にも来店する理由があります。タピオカは商品の魅力の一つですが、それだけが目的ではないのです。
定番のお茶と新商品を組み合わせている
ゴンチャの特徴は、茶葉を選ぶ楽しさに加えて、甘さや氷の量、パール(タピオカ)などのトッピングを好みに合わせられることです。選択できる内容は商品や注文方法によって異なりますが、自分の定番の一杯を見つけやすい仕組みになっています。
さらに、旬の果物や季節の食材を取り入れた限定ドリンクも登場します。定番商品を繰り返し飲む人と、新商品を試しに訪れる人の両方を呼び込める点が強みでしょう。
ゴンチャが2026年に発表したグローバル20周年の資料でも、茶葉そのもののおいしさに加え、季節の商品や会話の弾む店舗空間をブランドの魅力として挙げています。
ゴンチャの店舗数はどれだけ増えた?ブーム後の成長を数字で確認
2024年8月放送のテレビ東京「カンブリア宮殿」によると、当時の国内店舗数は約160店舗でした。その後、2025年5月末には195店舗を展開する予定と発表され、2026年8月28日の公式資料では全国245店舗となっています。
- 2015年:日本1号店をオープン
- 2024年8月:約160店舗(テレビ東京の放送時点)
- 2025年5月末:195店舗を展開予定(公式発表)
- 2026年8月28日:245店舗(公式発表)
8月以降もエキマルシェ大阪店、イオンモール座間店、南砂町SUNAMO店などの開店情報が公式サイトに掲載されています。ただし、閉店分まで反映した2026年10月時点の全国総数は確定できないため、ここでは8月時点の245店舗を基準にしています。
店舗だけでなく来店客数も増えている
注目したいのは店舗数だけではありません。ゴンチャの2025年の公式資料では、年間来店客数が2019年から2024年の5年間で約1.7倍となり、2024年に3,012万人に達したと説明されています。
同社は2028年までに年間6,000万人を目指す方針も示しています。これは達成済みの数字ではなく、あくまで今後の目標です。
流行が落ち着いた後も出店が続き、来店客数も以前より増えていることから、一過性のタピオカ人気だけでは説明できない成長がうかがえます。
他のタピオカ専門店との違いは?ブーム後に起きた変化
2019年前後のタピオカブームでは、多くの事業者が市場へ参入しました。東京商工リサーチによると、タピオカ専業および関連企業は2019年8月の60社から2020年8月には125社に増加しています。
ただし、新型コロナウイルスの影響が広がった2020年4~8月は、新たにタピオカを扱い始めた13社のうち新設法人は2社にとどまり、参入の勢いが鈍化しました。
これは企業数の調査であり、「他のタピオカ店がすべて閉店した」という意味ではありません。現在も複数のティーブランドが営業しており、ゴンチャだけが生き残ったわけではない点には注意が必要です。
それでもゴンチャが成長した理由としては、タピオカの有無にかかわらず飲みたいと思えるお茶を提供し、店内で過ごす時間も商品の魅力にしてきたことが考えられます。単に流行の商品を売るのではなく、繰り返し訪れる習慣を作ったことが違いなのでしょう。
角田淳社長の改革とは?店員もゴンチャのファンになる仕組み
ゴンチャの成長を語るうえで欠かせないのが、2021年にゴンチャ ジャパンの社長に就任した角田淳(つのだ・じゅん)さんです。角田さんは以前、日本サブウェイの社長も務めていました。
2024年8月22日放送のテレビ東京「カンブリア宮殿」では、角田社長が就任後、全国の店舗を回ってアルバイトを含む現場スタッフの声を聞き、働き方を変えていったことが紹介されました。
具体的には、髪色の自由化やアルバイトスタッフの商品開発への参加などです。働く人が自分らしく楽しめる環境を整えることで、店舗の雰囲気を改善しようとしたのです。
採用倍率13倍超の店舗も
同番組では、2024年7月に開店した横浜の新店舗で、30人の募集に約400人が応募したという事例も紹介されました。ゴンチャが好きだから働きたいという人が集まり、ファンであるスタッフが接客を通じて新たなファンを増やす。そんな好循環が経営の特徴として取り上げられています。
もちろん、すべての店舗が同じ倍率というわけではありません。それでも商品の人気が採用面にもつながっている点は興味深いところです。
「おしゃべり歓迎」で店内の過ごし方も提案
ゴンチャは「おしゃべり歓迎」を打ち出し、友達や家族との会話を楽しめる場所づくりにも力を入れてきました。テレビ東京も、静かに過ごすイメージのあるカフェとは異なる店舗体験を差別化のポイントとして紹介しています。
スターバックスなどのコーヒーチェーンと完全に競合しないわけではありませんが、お茶が飲みたい日とコーヒーが飲みたい日では利用目的も変わります。どちらかが勝つというより、異なる需要を取り込みながら棲み分けていると見るのが自然です。
会員450万人の「My Gong cha」と今後の成長
2025年には日本上陸10周年に合わせ、新たな店舗体験やファンプログラムなどを進める方針も打ち出しました。2026年9月28日の公式発表によると、2025年5月に始まった「My Gong cha」の会員数は450万人を突破しています。
会員向けにはモバイルオーダー、ポイントに相当するリーフのプログラム、6歳以上22歳以下を対象とした「ENJOY U22割」などを提供。2026年9月には、リーフで交換した一部のチケットを他の人へ贈れる新機能も加わりました。
会員450万人という数字だけで全員が頻繁に来店しているとは言えませんが、お店を利用するきっかけを増やし、顧客との関係を続ける仕組みとして注目できます。
今後は店舗が増えるほど接客品質や人材育成を維持する難しさも出てくるでしょう。それでも、タピオカブーム後のゴンチャの成長を振り返ると、成功の理由は一つではありません。
お茶そのもののおいしさ、商品を選ぶ楽しさ、気軽に会話できる場所、そして店舗スタッフの力。流行が終わった後も「また行きたい」と思える理由を積み重ねてきたことが、ゴンチャの強さにつながっているのではないでしょうか。
