韓国でマンジャロの処方を受けた取材スタッフの診察時間は、わずか34秒。しかも身長も体重も聞かれずに処方箋が出たというニュースが話題になっています。
2026年10月14日放送のフジテレビ「イット!」の調査報道で明らかになったものです。なぜこんなことが起こるのでしょうか。日本でも同じような処方はあり得るのか、現地の報道と日本の制度をもとに整理しました。
韓国のマンジャロ診察34秒はなぜ?何があった?
フジテレビの調査報道「スポットライト」が訪れたのは、韓国で「マンジャロの聖地」と呼ばれる地域。約500メートルの間に34もの薬局が並んでいたそうです。
取材スタッフが近くのクリニックで診察を受けると、診察室に入ってから出るまで、たった34秒。それでもマンジャロの処方箋を受け取れました。
さらに驚くのは、スタッフが現地で処方対象とされるBMIの基準を満たしていなかったこと。本人によれば、身長も体重も聞かれなかったといいます。
なぜこのクリニックが短時間で処方したのか、医師側の詳しい説明は報道されていません。ただ、韓国ではマンジャロの需要が急増しており、処方を求める患者が特定の医療機関に集まっている状況があります。
34秒なら必ず不適切な診察なの?
実は、診察時間だけで医療の質は決まりません。継続的に通院している患者なら、医師がこれまでの検査結果や体調を把握していて、診察が短く終わる場合もあります。
ただし、初めて処方する薬なら話は別。病歴や現在使っている薬、処方の必要性、副作用のリスクを判断するための情報が欠かせません。
今回の取材で注目すべきなのは「34秒」という数字だけではなく、処方の判断に必要な身長や体重について質問されなかったという点でしょう。
韓国では以前にも短時間処方が報じられていた
今回だけの話ではありません。2026年7月の韓国メディアの報道でも、ソウル市鍾路区のクリニックで、正常体重や低体重とみられる人に短時間で肥満治療薬が処方される実態が取り上げられていました。
診察室には1~2分間隔で患者が呼ばれ、身長や体重を測る手続きもなかったといいます。こうした報道を見ると、34秒の診察は単発の珍しい出来事とは言い切れません。
日本でもマンジャロを34秒で処方できる?
日本でも短時間の診察でマンジャロが処方される可能性はあります。診察時間に一律の最低分数が定められているわけではないためです。
ただし、「34秒で終わること」と「必要な診察を省いてよいこと」はまったく別です。
日本ではマンジャロは2型糖尿病の治療薬として承認されています。一方、美容クリニックやオンライン診療では、ダイエット目的で自由診療による処方が行われるケースもあります。こうした美容・痩身目的の使用は、マンジャロの承認された効能・効果の範囲外です。
同じ有効成分のチルゼパチドを含む「ゼップバウンド」は肥満症治療薬ですが、こちらも一定の医学的条件を満たす患者が対象です。
オンライン診療なら簡単に処方される?
オンライン診療でも、医師による適切な診察が必要なのは同じです。問診票を入力して薬が届く仕組みであっても、問診だけで十分なのか、必要な検査があるのか、治療中のフォローをどうするのかが重要になります。
つまり、日本でも韓国のような短時間処方が起こる余地はありますが、今回の取材と同じ条件で処方されていると断定できるわけではありません。
韓国から日本へマンジャロを買いに来るのはなぜ?
韓国で人気が高まる一方、日本までマンジャロを求めてやって来る人もいます。その背景にあるのが価格差です。
日本で購入するマンジャロを、韓国では寿司と組み合わせて「スシジャロ」と呼ぶこともあるそうです。テレビ朝日やフジテレビは、日本の医療機関に韓国人旅行者が訪れる様子を報じています。
価格は用量や診療費、保険適用の有無によって変わりますが、条件によっては韓国より日本のほうが大幅に安いケースがあります。旅費をかけても日本で買うほうが安いという声まで出ているほどです。
持ち帰りには法的な問題も
ただし、日本で処方されたからといって、韓国へ自由に持ち込めるわけではありません。
韓国では許可を受けないマンジャロなどの持ち込みが取り締まりの対象になっています。韓国関税庁によると、関連する不正持ち込みの摘発は2026年8月までに約5000件に上りました。
さらに韓国では、偽物のマンジャロも押収されています。検査で不純物などが見つかったものもあり、安さだけを頼りに購入することの危険性が浮き彫りになりました。
2026年10月9日には、上野厚生労働大臣が、外国人旅行者に帰国後の使用を目的とした過剰な期間分の医薬品を処方することは、医療安全上適切ではないとの考えを示しています。
マンジャロの副作用は?診察で確認すべきこと
マンジャロは血糖値を改善する作用に加えて、食欲を抑える作用などがあり、体重が減る場合があります。そのため「痩せる薬」として注目されていますが、医師の管理が必要な医薬品です。
主な副作用には吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などがあります。脱水や急性膵炎などの重い症状にも注意が必要です。
2026年10月、日本肥満学会は、こうした薬を使いながら過度な食事制限を行うことによるケトーシスやケトアシドーシスなどの危険性について注意を呼びかけました。
処方時には、薬を使う医学的な必要性だけでなく、病歴、服薬状況、副作用が出た場合の対応なども確認する必要があります。
診察が速く終われば便利かもしれません。でも、薬の安全性を考えれば「早く買えたからよかった」と単純には喜べない話ですよね。
まとめ
韓国のマンジャロ34秒診察は、取材スタッフが処方対象のBMI基準を満たしていなかったにもかかわらず、身長や体重を尋ねられずに処方箋を受け取ったというものでした。
日本でも短時間の診察はあり得ます。ただし、大切なのは時間ではなく、必要な確認が行われているかどうかです。
韓国での需要急増や日本への購入旅行、偽物の流通まで考えると、マンジャロをめぐる問題は処方の手軽さだけではありません。人気が高まっている今こそ、薬の安全な使い方に目を向けたいところです。
