2004年、プロ野球界を揺るがした一場靖弘さんの「栄養費問題」。巨人入りが内定していた大学球界屈指の右腕は、複数球団から金銭を受け取っていたことが発覚し、進路が一変しました。
2026年10月20日公開のスポーティングニュース日本版のインタビューでは、当時の騒動について「僕は真相は言いません。墓場まで持っていきます」と発言。22年を経ても明かさない事情があることを示しました。
何が起き、なぜ巨人入りは白紙になったのか。確認できる事実と本人の証言を整理します。
一場靖弘の裏金・栄養費問題とは?巨人入り白紙までの経緯
一場さんは群馬県出身。桐生第一高校では1999年夏の甲子園優勝を経験しました。当時のエースは1学年上の正田樹さんで、一場さんは2番手投手。仙台育英戦では145キロを記録しています。
高校卒業後はプロ入りを希望していましたが、監督の勧めもあり明治大学へ進学。本人によると、当初は東海大学を考えていたそうです。
明大では1年春から登板し、4年春の2004年には154キロを計測。8勝を挙げてリーグ優勝に貢献し、107奪三振を記録。全日本大学野球選手権では広島経済大学を相手に完全試合を達成しました。
まさに世代を代表する投手。ところが同年8月、巨人のスカウトから約200万円の金銭を受け取っていた問題が発覚します。さらに横浜から約60万円、阪神から約25万円を受け取っていたことも判明しました。
当時の日本学生野球憲章は、学生選手がプロ球団から金品を受け取ることを禁じていました。「栄養費」「交通費」などの名目であっても問題となったのです。
この騒動を受け、巨人の渡辺恒雄オーナーが辞任。横浜の砂原幸雄オーナー、阪神の久万俊二郎オーナーも辞任しました。一大学生への金銭提供が、3球団の経営トップの辞任にまで発展したのです。
なお、広島から交通費2,000円を受け取ったとの報道もありますが、本人は後年の取材でそのスカウトと話した記憶がないと述べています。巨人・横浜・阪神の金銭提供と同列に断定すべきではありません。
なぜ「墓場まで持っていく」?一場靖弘が語った人間不信
一場さんは巨人への入団が内定していましたが、栄養費問題の発覚で白紙に。大学野球部も退部し、世間から厳しい批判を浴びました。
2026年10月20日のインタビューで、一場さんは当時、事実ではない情報も報じられていたと振り返っています。報道陣の目を避けられず、外出すら難しい状況になったといいます。
「誰も味方してくれませんでしたね。本当にきつかったです」と語り、人間不信になったことも明かしました。
22年が過ぎ、周囲から詳しい事情を話してもよいのではないかと言われることも増えたそうです。それでも、一場さんは当時から口にしなかったことを今後も話さないと決めています。
そこで語ったのが「僕は真相は言いません。墓場まで持っていきます」という言葉でした。
重要なのは、金銭授受そのものは認めて謝罪している一方、騒動をめぐる報道のすべてが真実だったとは考えていないという点です。
ただし、具体的にどの報道が誤っていたのか、語らない真相が何なのかは明らかにしていません。誰かをかばっている、別の裏金があった、といった推測を事実のように扱うことはできません。
騒動によって半年近く満足に練習できず、プロ入り後には投球フォームを見失ったとも振り返っています。大学時代に頂点を極めた投手が、最も大切な時期に野球に集中できなくなったことは、その後の選手生活にも影を落としたようです。
詳しい本人の発言は、スポーティングニュース日本版のインタビューで読むことができます。
一場靖弘の現在は?楽天・ヤクルトを経て2社の社長に
巨人入りは実現しませんでしたが、一場さんは2004年のドラフトで新規参入の東北楽天ゴールデンイーグルスに自由獲得枠で入団しました。
楽天で2005年から2008年まで、ヤクルトで2009年から2012年までプレー。プロ通算16勝33敗を記録しました。大学時代の華々しい成績からすると、決して順風満帆なプロ生活ではありませんでした。
引退後はさまざまな仕事を経験し、2023年には「ほけんのぜんぶ」に入社。保険営業に携わりながら、野球指導や球団経営にも活動を広げています。
2026年1月5日付で、独立リーグ球団・山梨ファイアーウィンズの運営会社「株式会社山梨県民球団」の代表取締役社長に就任しました。さらに野球スクールを運営する株式会社ZENB ACADEMYでも代表取締役社長を務めています。
2026年10月現在44歳。保険営業と2社の経営という多忙な生活を送りながら、若い選手の育成に取り組んでいます。
球団公式サイトには、強いチームづくり、次世代の育成、地域との絆を重視するという代表メッセージが掲載されています。
かつて球界を揺るがす騒動の渦中にいた一場さんが、今度は選手を支える側にいる。その歩みには、数字だけでは測れない重みがあります。
まとめ
一場靖弘さんの栄養費問題では、巨人・横浜・阪神からの金銭提供が発覚し、3球団のオーナーが辞任。巨人入りが内定していた一場さんの進路も白紙になりました。
本人は金銭を受け取った事実を認めていますが、当時の報道には誤りや誇張があったと主張しています。そして2026年、明かしていない真相については今後も語らないと表明しました。
何が語られていないのかは、現時点では不明です。ただ、騒動後もプロ入りを果たし、現在は野球の未来を支える仕事に取り組んでいることは確かです。
