2026年10月16日、テスラの白いスポーツカーが巨大なカーブを逆さまに走り、空中で回転して着地する映像がSNSで拡散されています。「これはAI動画?」「どこで撮影した?」「本当に空を飛べる車なの?」と気になった人も多いのではないでしょうか。
映像はテスラが実際に開催した新型「Roadster(ロードスター)」の発表会での実演です。撮影場所は米テキサス州マグレガーにあるSpaceXのロケット試験施設。ただし、一般道で自由に飛べる市販車が完成したわけではありません。公式動画と報道をもとに、仕組みや発売時期まで整理します。
テスラの空飛ぶ車は本物?AIで作った動画ではない?
話題の映像は、2026年10月15日(現地時間)に披露された次世代ロードスターの試作車によるデモンストレーションです。テスラが発表会を公式YouTubeで配信し、ロイター通信や米自動車メディアなども実演を報じています。
動画では車が湾曲した巨大なスロープを駆け上がり、ほぼ上下逆さまの姿勢に。そのまま先端から離れて空中で向きを戻し、タイヤを下にして着地しました。さらに、ほかのテスラ車が並ぶ列を飛び越える実演も行われています。
発表会は実際の会場で行われたもので、単に生成AIが作った架空の動画という説明は当たりません。ただし、映像が実際のデモを伝えていることと、メーカー発表の性能が第三者によってすべて検証済みであることは別です。
テスラ公式「Roadster Event」(約23分)
映像の前半では逆さま走行と空中回転、後半ではデザインや加速性能が紹介されています。実演は安全性を考慮した無人の車両で行われ、一般の運転者が乗ったまま飛行したわけではありません。
撮影場所はテキサス州マグレガーのSpaceX試験施設
発表会が行われたのは、米テキサス州マグレガーにある「SpaceX Rocket Test and Development Center」です。テスラの技術責任者ラース・モラビー氏が、公式イベントの冒頭で施設名を説明しています。
マグレガーはウェーコの近郊に位置し、SpaceXがロケットエンジンなどの開発・試験を行う拠点として知られます。SpaceXもテスラもイーロン・マスク氏が率いる企業です。
今回のロードスターには、SpaceXのロケット技術を応用した高圧ガス推進装置が採用されています。宇宙開発と自動車開発のつながりを示す場所で実演されたわけです。
動画に映っている巨大な湾曲スロープは、通常の道路や高速道路ではありません。特別な条件を整えた実演用の設備であり、どんな道でも逆さまに走れるという意味ではありません。
どうやって逆さまに走り、空中で回転した?
車体を路面に吸い付けるファン
テスラは、車体下部のファンで空気を吸い出し、車体を路面へ強く押し付ける「サクション(吸引)システム」を説明しています。
通常の車は、車体に働く重力や走行中の空気の力を利用してタイヤの接地力を確保します。一方、この仕組みはファンによる吸引で路面に密着する力を作るため、今回のような特殊なカーブでも逆さまに近い姿勢を維持できたとされています。
SpaceX由来の高圧ガス推進装置
スロープを離れてから車体の姿勢を変える場面では、圧縮した空気を勢いよく噴射する「コールドガス・スラスター」が使われています。
噴射の反作用で車体を押し、空中で向きを変えたり、落下の速度を調整したりする仕組みです。イベントでは高圧空気を蓄えるタンクと複数の噴射口についても説明されました。
つまり、飛行機の翼で揚力を生み、何時間も飛行する車とは異なります。今回確認できたのは、専用施設での短時間の浮上と空中での姿勢制御です。一般的な意味での「空飛ぶ自動車」と受け取る際には注意が必要でしょう。
加速は0〜約97km/hで0.81秒と発表
会場では静止状態から時速60マイル(約96.6km)まで0.81秒で加速する実演結果も表示されました。最高速度については時速230マイル(約370km)超を目指すとされています。
ただし、こうした数値はテスラ側の発表や実演に基づきます。発売後の量産車が同じ性能になるかは、今後の正式な仕様発表や第三者の試験を待つ必要があります。
発売はいつ?日本でも買える?価格は3000万円?
テスラは2028年の生産開始を目標としています。ただし、これは確定した発売日や納車日ではありません。
次世代ロードスターは2017年にも発表され、当初は2020年の発売が見込まれていました。しかし計画は何度も延期されています。今回の目標についても、今後の進捗を確認する必要があります。
3種類のロードスターは何が違う?
- Performance:2人乗りで、公道走行を想定した基本の高性能仕様。
- Thrust:2人乗り。後方への高圧ガス噴射で加速を補助する仕様。
- Rocket:1人乗りで、車体周囲の推進装置によって空中での姿勢制御を行う特別仕様。招待制と案内されています。
飛行デモで披露された機能が、一般向けの全モデルに搭載されるわけではありません。特にRocket仕様は一般的な公道走行の認可を受けたモデルではないと案内されています。
3000万円は確定した販売価格ではない
SNSでは「ロケットオプションが3000万円」といった情報も見られますが、今回テスラが新型ロードスターの最終的な車両価格を正式発表したわけではありません。
報道によると、米国の予約案内ではPerformance仕様に5万ドル、Thrust仕様に25万ドルという金額が示されています。ただしこれらは予約に関する金額で、確定した車両本体価格とは異なります。
日本での発売時期や正式価格も、現時点では確認できていません。航空法や車両の保安基準などの問題もあり、仮に販売されても日本の公道から自由に離陸できるわけではないでしょう。
テスラの空飛ぶ車の動画は、AI生成の架空映像ではなく、SpaceXの試験施設で行われた新型ロードスターの実演でした。車体を吸い付けるファンと高圧ガスの推進装置を組み合わせた、これまでの自動車とは大きく異なる技術です。一方で、量産や日本での利用にはまだ不明な点もあります。2028年の生産目標に向け、どこまで実用化されるのか注目したいですね。
